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遺骨調査・収集

「沖縄での遺骨収集~新たな試み~」

遺骨調査・収集

2012/04/07

「沖縄での遺骨収集~新たな試み~」

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一昨年から始めた沖縄での遺骨収集活動はこれで5回目。いつもは仲間内であったり、また他の団体との連携でしたが、今回は私にとっては初めての試みとなる一般募集。遺骨収集活動を行っていますと時にイデオロギーの問題がでてくる。同じように遺骨収集活動を行っている団体同士がいがみ合うこともしばしば。そしてこの活動に対し色眼鏡をかけて見たがる人たち。やれ「右翼」だとか「左翼」だとか安易に色分けしたがる傾向。遺骨収集活動を始めて約5年。本当に色々とありました。どこかに所属して活動を行えば、その所属団体と対立構造にある団体から不本意な声があがったりする。またその双方が歩み寄ろうともしない。

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いずれにせよ遺骨収集活動を行っている団体は世の中から見れば極めて少数派。その決して広くはない世界の中で対立してしまうのはあまりに勿体ない。遺骨収集活動を行っている団体の中にも「右」「左」とイデオロギーが分かれ、その出発点から対立構造が生まれたりするとの事ですが、最終的な目的は一緒のはず。だとするのならば時にその右手と左手がガッチリと握り合い力を合わせればより大きな活動になるのに。とっ、僕なんかはいつもそう思いながら活動していますが、なかなか・・・。大義の前には時に個々のイデオロギーは殺さなければならない時もある。

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そもそも論として遺骨収集を一部の団体ばかりに頼り続けてきたことに違和感がある。日本社会全体としてあの戦争を振り返り、また国のために戦い亡くなっていった方々に対し自分たちに何が出来るのか、遺骨収集活動を通しながら先人からこの国を託された我々がどのような方向に向かって進んでいくべきなのか、活動を通して感じる必要がある。そこで考えたのが遺骨収集活動の一般募集。遺族会でも戦友会でも宗教団体でもNPO団体でもなく完全にフリーな立場で行いたかった。参加した方々に会員になっていただくものでもない。このような形もありなのだろうと。

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ただ、正直、募集を開始するまでは果たして人が集まるのか心配だった。なにしろ募集したのは僕のHPやフェイスブックといったこれまた限られた範囲。しかし、北海道、宮城、栃木、群馬、千葉、東京、大阪、岡山、沖縄から25名の方々が自費参加でありながらも参加してくださった。最年少は僕の環境学校にも参加してくれた京都の高校生。10代から50代までと幅広く、そしてその中でも目立ったのが20~30代。遺骨収集活動としては極めて若い層の方々の参加。そして女性の参加者も。大半が遺骨収集活動は始めて。中には今まで考えたこともなかったという参加者も。しかし、HPでの告知を見た時に「なぜだか分からないけれど、これには参加しないと」と申し込んでくださった方もいらした。

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一昨年から沖縄での活動を共にさせて頂いているのは沖縄在住の国吉勇さん。国吉さんはたった一人で遺骨、遺品収集を50年間続けている。戦争当時、まだ子どもだった国吉さん。米軍が上陸してきて沖縄決戦となり、逃げまどううちに母親とはぐれてしまった。戦争が終わり母親を探しあちこちの収容所を訪ね歩いた。そして、ある収容所で母親の亡骸を探し出した。

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「亡くなっていたけれども、それでもようやく母と会えたという思い、遺骨と対面した時の安心感は忘れられない。それが、私が遺骨遺収集をやろうと思ったきっかけであり、これだけ続けていられる心の支えなんです」。

国吉さんは基本的には一人で行動されている。ほとんど毎日、ヘルメットをかぶり、スコップとつるはしを手に防空壕やガマの中の土を掘り続ける。その生活を50年間続けてこられているのだ。国吉さんの言葉に「やれ右だ」とか「左だとか」、その程度の議論が実にどうでもよく、また幼く感じられた。

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2月15日、糸満市で遺骨収集活動が行われ半日、洞窟の中で掘り続けましたが、発見されたご遺骨はたったわずかであった。私に限らず参加者は汗だくになりながらも活動終了時間が過ぎてもスコップを放そうとしなかった。一体でも多く真っ暗闇の豪の中から早く見つけ出したいとそれだけだった。

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掘りながら、国吉さんの言葉「ここで亡くなった人は60年以上もずっとこの暗闇の世界に閉じ込められているんだよ。やっぱり、明るい空を見せてあげたいじゃないか」が頭を離れなかった。

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遺骨収集活動に対し様々な意見があるのは承知していますが、この活動は人になんと言われようが続けていく。活動を続けていけば必ず伝わる。そして山は動く。遺骨収集に関しこの社会はさほど大きな関心を抱かないが、それは多くの人が知らないだけで知ればこの社会も変わる。社会が変われば国も変わる。「単なる願望」という意見もあるかもしれないが、今までもそうやって現場の最前線でコツコツと活動をしてきた。そして小さな小さな一歩だったかもしれないが、確かに山は動いたではないか。遺骨収集も同じ。何故に遺骨集活動を続けているのか。思いは沢山ありますが、あえて一点に絞るとすれば、「国のために戦い亡くなっていった方々に対し冷たい国は必ず亡びるから」だ。遺骨収集活動は過去を振り返りながらも、これから先の日本を想えばこそやらなければならないと強く感じています。

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次回の沖縄での遺骨収集活動は6月中旬を予定しています。またこのHP等で参加者募集をします。今まで歴史や戦争の事に関心がなかった方でもどうぞ。この活動をきっかけに何かを感じ取って頂けたらそれでいい。

さて、僕は今、ヒマラヤの玄関口であるネパールのカトマンズにいます。明日からキャラバン開始です。これから約一月半の冒険が始まりますのでしばらくは頭の中も日本から離れますが、ヒマラヤでエネルギーをたっぷりと吸収し、帰国したらまた一から頑張りたい。では、ナマステ!

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2012年4月5日 カトマンズにて 野口健

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