アフリカの旅が始まり3週間。エジプト、タンザニアから舞台はケニアへ。エジプトでは母ちゃんとの再会、タンザニアではンゴロンゴロ、セレンゲティ国立公園、タランギレ国立公園と主に野生動物観察が目的(近々、野口健HP内の写真集サイトにてタンザニアの写真を掲載します)。
そしてケニアでは野生動物観察とは別に「洪水」、「エネルギー問題」、「難民問題」もテーマの中に加え、ぞれぞれの現場に訪れてきたので報告します。
「気候変動への適応のためのニャンド川流域コミュニティ洪水対策計画」
8月22日、まずはビクトリア湖のあるキスムへ。ケニア西部のニャンザ州のニャンド川流域は、リフトバレーの断層台地上の上流域の森林伐採、農地拡大、下流平野部の人家の拡大により洪水被害が頻発しているとのこと。雨季になるとニャンド川は毎年決まって氾濫する。そこでJICAは洪水対策等に無償資金協力を行っている。
洪水の時に汚水と井戸水が混じらないように井戸の高さを上げている。
もともと洪水の多いこの地域ですが、近年、気候変動の影響によりビクトリア湖周辺では50ミリメートルを超過する降雨日数の増加が指摘されている。JICAはニャンド県とキスム県の24村の洪水被害などが大きいとのことから、気候変動に対して被害を受けやすい途上国において必要な気候変動対応のための支援を行う「環境プログラム無償資金協力」の実施を決めた。主な内容はハザードマップ作成、防災訓練実施、小学生への洪水対策教育、井戸、避難所、道路下を横切る排水溝、人道橋、コミュニティーの洪水管理組織の設立、洪水管理訓練、ポスターやラジオ放送による啓蒙活動など。
道路が洪水によって流されないため、また車が移動できるためのカルバート
(道路下を横切る排水溝)
その現場を訪れましたが、洪水の度に井戸に汚水が流れ込み汚染することから井戸水の汲み上げをする場所を高台に移し洪水時の汚水が紛れ込まれないようにしていた。
そして避難所の建設とその避難所に避難することを周辺住民に徹底すること。何故ならば氾濫地域の地元民へのインタビューをすると、避難せず自宅にとどまる人が46%と非常に多い。理由は多々ある。避難したら自宅の中が略奪される恐れがある。避難中にワニやカバに襲われるケールがある。更に、人は避難できても家畜は避難所には連れて行くことが出来ないので家畜と運命を共にするという人々もいる。そこで微高地に家畜を避難させる事を提案。しかしそれでも避難せず、犠牲が後を絶たないという。
そこで井戸水などをどのように守るのか、またどのようにして地元民を避難所に避難させるか、その避難所の設置などJICAは地元のコミュニティーと一緒になってプロジェクトを開始。洪水時のハザードマップを作成し、防災訓練、小学生への洪水対策教育、避難所建設、避難路建設などコミュニティーをベースとした洪水対策事業、また、構造物だけではなく啓発活動や防災訓練といったソフト面にも力を入れて活動している。道路や飛行場などといった構造物を造る援助というのはいかにも派手で注目されがちですが、しかし、こうした地元の方々と一緒になって行う「草の根」的な支援はとても大切。特に災害大国日本には過去の様々な経験やノウハウの中から支援できる事も多いはず。決して派手ではないかもしれないが、こうした地道な活動がいかにもJICAらしくて素晴らしい。