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富士山清掃

富士山の世界遺産登録へマッタ!

富士山清掃

2013/04/29

富士山の世界遺産登録へマッタ!

このヒマラヤ遠征前に「富士山」を巡って色々とあった。僕のツイッターやフェイスブックを見ている方にはもうご存知だろうが、そう、富士山の世界遺産登録について。山梨、静岡両県が富士山の世界遺産登録に向けてユネスコに申請した。僕のところには「富士山の世界遺産についてどう思いますか」との問いが沢山寄せられたが、その度に「富士山はまだそのような状況にはない。今回の世界遺産は見送られることを期待している」と繰り返すしかない。世界遺産そのものに反対というよりも『何のために世界遺産を目指すのか』そこが見えてこない。過去に世界自然遺産を目指していた時期もあったようだが、環境省含め「自然遺産は無理」との結論に、では「世界文化遺産を目指そう」となった経緯があったように記憶しているが、世界遺産に登録されることが本当に素晴らしくて全てにおいてバラ色一色なのだろうか。世界遺産登録されてから環境破壊に繋がったケースが過去の事例の中に本当になかったのだろうか。

「世界遺産」を「観光誘致」と捉える地元観光業者の気持ちも分かる。確かに世界遺産に登録されれば短期的には観光客は爆発的に増えるだろう。それは屋久島も知床もそうであったように。片道25時間かかる小笠原諸島も世界遺産に登録されだいぶ増えたそうだ。富士山は屋久島や知床、また小笠原と比較するとアプローチのハードルが非常に低い。簡単に行けるわけだ。それ故に富士山が世界遺産に登録されれば屋久島らのそれとは比較にならないほど観光客が殺到するだろう。したがって観光業者は富士山の世界遺産登録を熱望するのも無理はない。

 しかし、受け入れ態勢も明確になっていないまま世界遺産登録されてしまったらどうなるのか。想像しただけでもゾッとする。世界遺産へ申請した後に、今になって突如、静岡県から「入山制限の必要性があるのでは」と声が上がったが、いかにも取ってつけた感がある。どのようにして富士山を守っていくのか、議論に議論を重ね、実際に様々な取り組みを行ってきた結果、世界遺産に登録されればいいと思うが、世界遺産ありきで突っ走って本当に大丈夫なのだろうかと不安もあれば、静岡、山梨両県政に対する不信感にも繋がりかねない。

何故、僕がこれほどまでに静岡、山梨両県に対し疑問に感じるのかと言えば東京都の小笠原諸島への取り組みに関わりずっと見てきたからだろう。

石原都知事(当時)は都知事に就任し、まず取り組み始めたのは東京都の環境問題だ。あのディーゼル規制もそうだろう。また小笠原諸島や高尾山、奥多摩といった山岳部含め東京都が抱える自然を東京都自らが守るのだと明確な意思表示を行った。石原都知事の口癖は「国(環境省)がやれなかったことをやる」。僕ら民間人も呼ばれチームに加わったが、石原都知事から「小笠原諸島を世界遺産にする。何故ならば南島含め観光客による環境破壊が酷い。世界遺産にするということで今まで国がやれなかった徹底的なルールを東京都が作る。斬新なアイディアがほしい。いつでも提案してくれ」との指示があった。

東洋のガラパゴスとも呼ばれている小笠原諸島。そのガラパゴスがどのような環境保護政策を行っているのか、また世界遺産でもあるガラパゴスの抱えている問題点を直接知る必要があると石原都知事は自らガラパゴスへの視察に向かった。ガラパゴスだけではない。日本の白神山地にも出かけ実際に森を歩きながら地元のマタギの方々に世界遺産になったことでどのような変化があったのか特に環境保護の目線で「メリットとデメリット」を確かめていた。

小笠原諸島にも直接足を運び現場を知ったうえで石原都知事は南島の入島制限を発表。島民からは「入島制限されたら観光客が減る」との意見も相次いだが、それでも必ず制限はすると断言。紆余曲折ありながらも一日100人を制限とした。地方自治体で人数制限をしたのは東京都が始めて。

また当時、環境省のレンジャーは小笠原諸島に駐在していなかったが、東京都は東京都レンジャー制度を立ち上げ3名の隊員を島に派遣。また都立大の先生方を島に派遣し地元のガイドを育てようと講習会を開きエコツーリズムのあり方、また動植物の生態系などの講義が行われた。そしてその講習会を受けた人しか東京都認定ガイドになれないとした。南島へはこの東京都認定ガイドがつかなければ上陸できないとし、しかも10人の観光客に対し1人のガイドを義務づけた。

それだけではない。生態系保護の為に外来種の駆除も徹底的に行った。このように上げればきりがない程に次から次へと新たな取り組みを行った。当初、島民の中から「東京都の暴走だ」と批判の声が上がったが、それでも「いずれ理解してもらえる」と怯むことはなかった。石原都知事の強烈なリーダーシップによるところが強かったがそれだけではない。取り組みが一貫して小笠原諸島の環境保護としていただけに都の職員も一丸となって世界遺産に向けて邁進した。

約10年間、こうしてコツコツと試行錯誤を続けながら東京都は小笠原諸島の世界遺産登録へ向けて徹底に準備しその結果、小笠原諸島は世界遺産に登録されたわけで、つまりは小笠原諸島の環境保護のための「世界遺産」だったのだ。

僕は東京都レンジャーの隊長として石原都政の地道な取り組みを見ていただけに、その長い道のりを理解しているつもりです。
その東京都の取り組みと比べ静岡県、山梨県はどれだけ世界遺産に向けて取り組んできたのだろうか。

そしてとても残念な事は膝元で起きている。富士山の世界遺産で儲けたい人たちが「世界遺産万歳」を叫ぶのはまだ分かるとして、環境保護団体がそれに便乗してはならない。富士山クラブはあくまでも環境保護団体として富士山と関わってきたはずだ。私もその一員として誇りを感じながら共に清掃活動を行ってきた。しかし、富士山クラブは世界遺産推進団体になってしまった。僕も富士山クラブの現場スタッフもこの決断に愕然とし、また情けなかった。富士山クラブもこの世界遺産云々によってスタッフ間、また現場スタッフと本部との温度差が生じ混乱している。環境保護団体が世界遺産登録に対し安易に無条件で賛成するようならば、もはや「環境保護団体としての役割を終えているのでは」とさえ感じることがある。

そして10年間共に続けてきた毎日新聞主催の富士山清掃キャンペーン。新聞社といえども企業である以上は利益を求めなければならないことも分かる。世界遺産キャンペーンを展開したいという企業論理もあるのだろう。しかし、活動には絶えず大義が求められる。メディアとして世界遺産を煽(あお)るだけ煽って、もし世界遺産登録後に環境破壊に拍車がかかったとしたら、毎日新聞はその責任を取る覚悟と自覚はあるのだろうか。「直接的な加害者ではないので責任はありません」という事なのか。メディアは企業であると同時に社会的な影響力をも同時に背負っている。世の中の風潮に対し「本当に大丈夫か」と時に警鐘を鳴らす役割があるはずだ。

毎日新聞社の中にも富士山世界遺産登録に関して不安視する声も上がったそうだが、「会社の方針」ということで世界遺産登録に向けて旗を振り続けている。毎日新聞と一緒にやってきた富士山清掃活動も気がつけば事実上の世界遺産推進キャンペーンとなり、その矛盾に耐え切れず10年続いた毎日新聞との活動に終止符を打つことにしました。10年間の積み重ねがあっただけに、とても辛く重たい決断でした。10年間の最後がこのような結末であった事がとても残念ですが、ただ、毎日新聞社には毎日新聞社としての考え方がある。どちらが正しくて、どちらが間違えているというよりも、活動している内に気がつけば目指すべきゴールが違っていたということ。そうは言っても、富士山の清掃活動がこれだけの広がりを見せたのも毎日新聞の功績です。素直に感謝したい。

僕の言動は世界遺産で盛り上がっている方々からすれば「水を差す行為」に映るのかもしれないが、しかし、こればっかりはどうしようもない。人を誤魔化せても自分自身は誤魔化せるはずもなく。幸いなことに僕には富士山の現場に仲間がいる。そして今まで一緒に清掃してきた多くの参加者たちも。富士山クラブを去るのか、それとも留まるのか。色々と考えましたがクビにならない限り富士山クラブの一員とやっていくつもりです。何故ならば現場スタッフとは気持ちが同じだから。これからは現場の声が会の方針に反映されるべき頑張らなければと思う。

そして最後に。だいぶクドクなりましたが、静岡、山梨両県が連携しながら富士山の自然保護政策を一緒になって築いていってほしい。受け入れ態勢には入山規制もあれば、入山料制度もあるだろう。そして静岡県には山梨県が始めたように富士山レンジャー制度を立ち上げて頂きたい。山梨県富士山レンジャーと静岡県富士山レンジャーが同じ制服を着て連携しながら現場の第一線で富士山を守ってほしい。

入山規制一つとっても登山口が複数ある中で統一のルールを作らなければならないだろうし、一言で入山規制といってはででは「何人までがよくて、それ以上はダメとするのか(規制の対象)」これはかなり難しいテーマだ。ある程度の議論の積み重ねが必要となる。最初の「詰め」が肝心で慌ててバタバタと決めてしまうと後に必ずその歪が生じる。ボタンのかけ違いがあってはならない。

小笠原諸島は東京都だが、富士山は静岡、山梨と二つの県にまたがっているだけにさらに複雑になりだろうし、焦らずにコツコツと積み重ねていってほしい。その結果、富士山が世界遺産になればそれでいいじゃないかと思う今日この頃です。ハイ、これでお終い。

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