本日の産経新聞連載「直球&曲球」です。
=「尖閣諸島は固有種の宝庫 モグラ、サワガニ、ツツジ...」。=
4年前、「センカクモグラを守る会」を設立した。日本の通常のモグラの歯は何本あるか分かりますか? 42本です。しかし、世界中の中でセンカクモグラだけが38本。獣医学者に言わせると、「これは新種であり、ものすごい発見」とのこと。
なぜ、僕が「センカクモグラを守る会」を立ち上げたのか。平成22年9月7日、尖閣諸島付近で、あの中国漁船による衝突事件が起きた。ちょうどその時、僕はアフリカにいた。アフリカではウンザリさせられるほど中国パワーを見せつけられていた。中国による大規模なアフリカ援助であるが、その目的はアフリカの資源を狙っているという趣旨の記事が現地の新聞にも掲載されるほど露骨であった。
虎視眈々(たんたん)と他国の資源を狙う中国。周辺諸国に多大な緊迫感と被害を及ぼす中国。尖閣諸島に対し、自分にできることはないか、と考えたのが「センカクモグラを守る会」である。
実は尖閣諸島は固有種の宝庫なのだ。センカクモグラをはじめ、センカクサワガニ、センカクツツジなど現在判明しているだけでも15種類の固有生物が確認されている。しかし、その大半が環境省のレッドリストで最も絶滅の恐れの高い絶滅危惧種1A類に指定されている。
なぜならば昭和53(1978)年に民間団体によりヤギが持ち込まれ、今では600頭以上増殖したといわれている。このヤギたちが草木を食べ尽くし、また糞尿(ふんにょう)による土壌汚染が、島の生態系に大きな影響を及ぼしているのだ。
尖閣諸島での生態系を守るためにまずやるべきことは生物学者による上陸調査、次にヤギの駆除だろう。魚釣島には学者が滞在しながら研究できる施設も必要だ。会では、民主党政権時に政府へ上陸調査のための要望書を提出したが、却下されてしまった。
政府は「領土問題は存在しない」と繰り返す。ならば上陸調査は可能なはずだ。
そして、一番の懸念は日本人の危機感の持続力のなさ。衝突事件の時はあれだけ大騒ぎしながらすぐに忘れてしまうのだ。