本日の産経新聞に連載「直球&曲球」が掲載されました。今回のテーマは「情報機関の設立」です。
2023年5月18日 産経新聞掲載
「日本にも本格的な情報機関が必要だ」
先日、テレビの番組で日本のスパイ、テロ対策について議論した。2001年の米中枢同時テロを受けて同年10月、テロ対策特別措置法が制定された。一部の法律家や野党から「憲法違反ではないのか」との声が上がったが、国際社会の中で責任ある行動を取る上で一歩前進だったはずだ。そして今年、「スパイ防止法」制定に向けた有識者による議論が始まった。
以前から日本はスパイ天国だとされている。ひとつにはスパイを取り締まる法律がないからだ。また、法律だけができても、ひそかに入り込んでくるスパイをどうやって見つけ出すのか。相手はプロのスパイである。警察だけで果たして対応できるのか。先進国で本格的な情報機関が存在していないのは日本だけだ、と聞く。「スパイ防止法」をより有効的なものにするには日本にも独立した情報機関を設立すべきである。
父は外交官として駐イエメン大使を務めた。退官した後に聞いた話だが、湾岸戦争やリビアによる欧州でのテロ活動について日本の外交官として高度な情報収集に奔走したものの限界があったという。他国の情報機関と接触しても「機密情報はギブ・アンド・テーク。日本にはわれわれに提供できる情報があるのか」と相手にされなかった。
「日本に機密情報を提供した場合、外部に漏れてしまう」と信用されなかったとも。「日本にも内閣(内調)や外務省、自衛隊などに情報収集を担当している部署があるが、予算も人員もごくわずか。独立した情報機関がない日本では情報収集や情報の管理能力に限界がある。他国に信用されないのも当たり前だ」と嘆いていた。
番組に出演していた警察出身の国会議員に「仮に日本に情報機関があれば北朝鮮による拉致も防げましたか」と尋ねたら「その可能性はあったでしょう」と。北朝鮮の工作員は日本各地でさまざまな活動を行っていたが、警察で対応できるレベルではない。情報機関の設立には人権侵害を理由に根強い反発もあるが、拉致被害者こそ人権侵害の最大の被害者であることを肝に銘じなければならない。
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