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ネパールの明治維新

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2001/11/28

ネパールの明治維新

「ネパール警察ら35人死亡毛沢東主義派軍事施設など襲撃」
11月25日の毎日新聞で報道された記事だ。そして11月27日の朝日新聞では
「極左ゲリラ800人ほう起ネパール治安部隊と衝突200人死亡」
と報じられた。その翌日の11月28日、読売新聞では
「ネパール国王が非常事態宣言発令」
とギャネンドラ国王が26日夜全土に非常事態を発令したとのこと。ここ数年、ネパールに行くたびにマオイスト(毛沢東主義派)のテロ活動が頻繁に繰り返されるようになってきた。いまさら、共産主義ではないだろうと、時代錯誤もはなはだしいと感じていたのだが、しかし、ネパール人から話を聞いているうちに、マオイストがいわゆる共産主義者とも違うように感じられた。

ネパール人の大半が下級カースト出身者だ。カースト社会のネパールでは、下級カースト出身者が社会的に出生できるシステムがない。カーストによって職業も左右される。マオイストは立憲君主制の廃止などを求めて反政府闘争を繰り広げているが、このマオイストの活動に貧しい山岳地帯の農民が支持している。その多くが下級カースト出身者であり、彼らがマオイストを指示するのは、そのカースト社会への不満からきているという。

立憲君主制の廃止はすなわち王制への反発であり、なぜならば王室そのものが、カースト社会の象徴であるからだ。カースト社会によって長年押さえつけられてきた大半の下級カースト者の反発が毛沢東主義という形で次第にその勢力を拡大し続けている。以前、このヤッホーの中にもチョモランマからカトマンズへ降りてきたらマオイストによる暴動、ストライキがおき、ネパールから脱出するのに苦労した出来事を書いた。平和であったネパールがここにきてどうもキナ臭くなってきた。

これまでにマオイストの闘争により、2000人以上の犠牲者をだしてきた。治安悪化が旅行者を激減させ、また、アメリカの同時テロでアフガン戦争が起きたことによりさらに外国人の足がネパールへ向かなくなった。現地の旅行代理店が悲鳴をあげていた。日本人にいたってはツアーそのものが成り立たないとか・・・。

経済の悪化がさらなるネパール情勢を不安定にさせる。マオイストが狙っているのがさらなる国の混乱か。カースト社会に守られてきたネパール王制も前の国王・王妃の暗殺事件から足元が崩れ始めているような気がしてならない。1つの時代の終焉を迎えようとしているのか。

マオイストの目的はネパール版の明治維新なのだろうか・・・。

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