キャンプ2までの順化を済ました我々は、キャンプ1を通過し、一気にベースキャンプからキャンプ2へと向かった。キャンプ2手前で温度が上昇し、厳しい照り返しも手伝って氷河上は灼熱地獄となり、高畑隊員とふらふらになりながらベースキャンプから8時間かけてキャンプ2へとたどり着いた。極度の寒さと極度の暑さ。これじゃ体がもたないよ! そしてさらに大きく開いたクレパス。クレバスを渡るために使うハシゴは、3本から4本、5本とその数を増やしていく。氷柱群もさらに傾きかけ、その下を通過しなければならないのだから、緊張感がさらに増す。いつまで続くのか、このロシアンルーレット生活。

 キャンプ2の夜はやはり寝られない。横になっているだけで、胸の圧迫感を感じ、思わず寝袋のジッパーを開け、上半身を起こしてしまう。ひどい時には、呼吸をしていない自分に気がついて目を覚ますことさえある。
夜中体を起こし、寒いので火器に火をつけ、手を温めながら時計とにらめっこしながら、「早く朝よこい!」
とうなってしまう。横の高畑隊員のテントからも、唸り声が聞こえてきて、
「あいつも苦しんでいるな~」
と仲間の様子に一安心!?

 村口カメラマンと渡邊玉枝さんは5月3日にベースキャンプに下りていった。村口カメラマンには98年の2度目のエベレスト挑戦で初めて撮影していただき、その後も6回のエベレスト遠征中、4回共に行動していただいている。

  あの、ネスカフェのコマーシャル映像も村口カメラマンがチョモランマ側の7900メートル付近で撮影してくださったものだ。今回は、野口清掃隊の撮影プラス、エベレスト女性最高齢登頂を目指す渡邊玉枝さん(63)のサポートでエベレスト入りしている渡邊枝さんはすでに2座の8000メートル峰に登頂し、チョオユ(8201メートル)では当時女性最高齢8000メートル峰登頂記録を樹立されている。

  何度か、アイスフォール超えを共にさせていただいたが、63歳とは思えない強健ぶりに驚かされた。村口さんも
「玉枝さんについて歩くの大変だよ~歩くの速いんだもん。」
と漏らしていた。我が隊のシェルパからも
「あんなに強い日本人女性ははじめて見た!」
と歓声が上がるほど、彼女は強い!世界最高齢女性エベレストサミッタが日本からでそうだ!渡邊玉枝さんの情報、これからこのホームページ上でも紹介したいと思います。

 キャンプ2について2日目、キャンプ3を目指す予定だったが、夜中から胃が痛み出し、結局1日スライドしてしまった。前夜の夕食後に冷えたコーヒゼリーを食べてしまったのがいけなかったのか? 韓国3人組みは午前8時にキャンプ3へ向けて出発。その日は一日じゅうテントの中で静かに暮らした。

  そんななかで先日、キャンプ3から滑落し死亡した英国人の遺体をキャンプ2付近のクレパスに埋葬したとの情報を耳にする。キャンプ2は遺体を回収できる場所だ。埋葬といっても、永遠に分解されることなく残ってしまう遺体。氷河の移動でクレパスに埋められていたはずの、遺体が再び露出することもある。

  年々増えつづける遺体が今日ではエベレストの環境保護というテーマで問題視されているにも関わらず、「放置」されていく遺体に僕はすっきりしない。8000メートルを超え、回収困難な、また不可能な場ではやむを得ないが、充分に回収できる地点での遭難者の遺体はその隊が責任をもって回収するべきではないか。

  遭難事故を起こした公募隊のシェルパは
「『英国の遺族に連絡したら、クレパスに埋葬してほしい』との返事だったので、そのように処理した。」
と話していた。遺族の方々のお気持ちも分からないわけではないが、しかし、エベレストは別にその遭難者の私有地でもなければ、墓地でもない。例えば、私が富士山で仮に遭難し、私の家族が
「健は富士山が好きだったので、遺体はそのまま放置してください」
と、夏の登山シーズン中に登山道のすぐ脇に私のミイラが横たわっていたら、年間30万人もの登山者がどのような気持ちにさせられるだろうか・・・。
実際にエベレスト登山中に目にする遺体の数々に、登山者側から
「なんとか回収してほしい」
と指摘されだし、ネパール山岳協会から
「野口隊には遺体の回収を期待する」
とのコメントまでだされる始末だ。96年に8000メートル付近で遭難された難波康子さんのご遺体は翌年にシェルパらの手によってベースキャンプまで下ろされた。その以前にも、1993年、ネパール人女性初のエベレスト・サミッターになったパサン・ラムシェルパ二も南方付近(8500メートル)で遭難死したが、仲間らによって回収された。8000メートルを超える困難な場での遭難でも回収されてきた経緯がある。

 親しい身内がエベレストでなくなり、
「あの人はエベレストが好きだった。好きなエベレストで死んだのだからそのままにしてあげて」
は、今の時代通用しないのではないか。回収できる場での「遺体放置」はあまりにも無責任だと、私にはそう思えてならない。

 

僕の名前は 野口健 カメラマンの村口徳行さん サミットを目指す渡邊玉枝さん

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