家族

2002/10/16

家族

 


 

 僕には2人の娘がいる。サクラと奈々。サクラは3歳のラブラドル犬、奈々は2~3歳の猫。サクラは99年エベレスト挑戦直前に知り合いの方からいただいた。奈々は2000年9月、自宅の近所を歩いていたらいきなり畑から
「ニャー」
と、と泣きながらでてきた。野良猫が多かったので、別に気にもせずそのまま歩いて帰宅しようとしたが、いつまでも
「ニャーニャー」
とついてくる。どれどれと抱きかかえてその顔を覗き込んだら最後。可愛い。

「オスかな? メスかな?」
と、調べてみたらメスだった。それならば、
「俺の家の子になるか」
と、声をかけたら
「ニャー」
と。快く返事してくれた。

 しかし、つれて帰ってからが一騒動。当時は、山岳部の後輩3人と共同生活していたから、
「相談もせず勝手に!」
と、猛反対。
「野口さん!今度ヒマラヤ行った時どうするんですか!サクラで精一杯ですよ!だいたいいつも勝手に決めすぎですよ!サクラの時もエベレストに行く直前にいきなりつれてきて!大変だったんですから!」
確かに後輩の言う通りだった。しかし、夜遅く、畑で運命の出会いをしてしまった以上、これはしょうがないだろうとみんなを説得したが、最後まで膨れっ面。しかし、
「ニャー」
と泣くこの子に誰も冷たくなれず、結局はみんなで家族にしようと「奈々」と命名。99年エベレストに登頂してから、生活環境が一変し講演、また講演、そして講演と人人人の渦の中で戸惑いもがいていた時、家に帰ればいつもサクラがシッポを振りながら待っていた。サクラの無邪気に喜ぶ顔を見ているだけで気持ちが安らいだ。

 ある時、盲腸で夜中にトイレの前でうずくまっていたらサクラが体をピタッと寄せてきて悲しそうな顔で僕の事を心配してくれた。その直後、今度はサクラが僕の薬を食べてしまい、それが抗生剤だったから、大変。呼吸が荒くなり吐き出し自分のお腹を摩りながらもサクラの背中を摩っていた。共に病に苦しんでくれた仲間。奈々も帰宅したときには、必ず玄関で出迎えてくれる。サクラと奈々も仲良し。2人の娘の存在にどれだけ助けられてきたか・・・。

 正直、忙しい日々の中で面倒みきれないジレンマや苛立ちもあった。しかし、なんだかんだ言って娘達のほうが大人で僕の面倒をよく見てくれている。家族に囲まれて僕は幸せだ。しかし、奈々には重たい病がある。シシャパンマ出発直前に乳腺の癌が発病。医師からも覚悟するように伝えられた。シシャパンマ挑戦中もずっと入院していた。

 そして10月18日から再入院。ついにメスを入れる。
「親がしっかりしていなきゃダメですよこの子のほうが辛いんですから!」
と医師に怒られた。親としての責任はなんなのだろうか・・・。最後まで諦めない。これが僕の最低限の責任かもしれない。シシャパンマから戻り自身の体調不良から家でじっと静養しなければならなかった。辛い時間でもあったが、しかし、いままでになかった、サクラや奈々達とのゆったりとした時間。やっぱり家族っていいな~

 

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