2003年エベレスト清掃登山 , ヒマラヤ

2003/04/23

ベースキャンプ入り

 



 4月21日、予定より一日遅れのBC入り。途中で谷口隊員や韓国隊員の李さんと合流。順化トレーニングを行ったり、寺で安全を祈りながらゆっくりと登ってきたのだが5000mを越えたあたりから不思議と体が軽くなり歩くペースも速くなっていくのが面白かった。スポーツマッサージの資格を持つ李隊員に痛む背中を念入りに解して頂いたのが良かったのだろうし、BC入りを目前に気持ちが高ぶっていたのだろう。これで先発隊に追いつける。しかし、残念なことに我々がBC入りした日の早朝にアイスフォールで氷河の崩壊があり、クレパスに梯子を架け渡っていたフランス隊のシェルパ2名が梯子ごと崩れてきた氷柱に押しつぶされクレパスに滑落し、一名は奇跡的に無傷であったが、もう一人は腰や背骨あたり数箇所の骨折と、内臓を痛め、救助されその日の午後に救助隊のヘリによってカトマンズに下ろされた。そして、もうひとつショックな出来事があり、我が隊のシェルパの一人がBCで体調を崩し診療所のある村まで下ろしたが、そこで意識を失いやはりヘリにってカトマンズに運ばれたのだが、いまだに入院先の病院で意識がもうろうとしているとのこと。エベレストにいる我々には彼の無事を祈るしかできない。また僕とは10年以上の付き合いでいつも行動を共にしてきたデンディが、がBCへのキャラバン中に行方不明になった。どこに行ってしまったのか分からないが事故とは考えづらく一説にはカトマンズに帰ってしまったとの未確認情報まで入り、なんとも落ち着かない。

 BC入りと同時に厳しい現実と直面したが、しかし、ここで気持ちを入れ替えて最後のエベレスト清掃活動を開始したい。高畑・田附隊員はすでにキャンプ2(6400m)に到達しており、高所順応も順調なようで、いつも高山病に苦しめられるのが日課の高畑隊員までが元気一杯なのには少々驚いたが、そんなことより僕が来るまでよく隊を守ってくれたと感謝している。田附隊員も自らが「ウンチ隊員」と名乗るようにキャンプ2のトイレの回収に執念を燃やしていた。ザックに詰めこめられたウンチ袋からは悪臭が漂い アイスフォールですれ違う他の登山隊員からは振り返られてしまうそうだが、それでも怯むことなく自身の使命だと胸を張っている姿に胸打たれた。 BCについてからは安全祈願や他の登山隊への挨拶周りを行った。世界最高齢でのエベレスト登頂を目指す三浦雄一郎氏とお会いしたのだが、その元気なお姿にやはり世界の三浦雄一郎を見た気がした。高畑隊員や田附隊員もお世話になり、特にBCでお鍋をご馳走になったそうで、「美味しかった!」と喜んでいた。BCでのお鍋には正直羨ましかったなぁ~ 22日には東京の武道館で行われたコスモ アースコンシャス アクト アースデー・コンサートで夏川りみさんやINSPiのみなさんらのンサート会場と中継を結んだ。昨年の年末に入院先の病室でつけっ放しにしていたテレビからあまりにも美しい歌声が聴こえてきて、思わず目頭が熱くなりながら聴き入ってしまったのが、夏川りみさんの歌だった。恥ずかしながら、それまで夏川りみさんを知らなかった。しかし退院してから真っ先に彼女のCDを買いに走った。今もベースキャンプでこの原稿を書きながら彼女の歌声を聞いています。自暴自棄になりかけていた入院中に彼女の歌声にどれだけ助けられたか、それだけにエベレストのBCから夏川さんと中継でお話できたのが とてもとても嬉しかった。今年のエベレストも今ひとつ安定しない天候で、昨年に比べると暖かいぶん、雪がよく降る。明日、李隊員、谷口隊員、平賀カメラマンと共にキャンプ1へと向かう。一年ぶりのアイスフォール越えに落ち着かないが、精一杯楽しんできたい。

 

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