5月26日、午前11時。 カトマンズ市内のマッラホテルで、4月14日から5月24日まで行われた「野口健マナスル清掃登山」の記者会見を行いました。会見会場には、ネパールのテレビ局、新聞記者、海外のメディア等から30名ほどが足を運びました。

 会見に先立ち、マナスルベースキャンプでの清掃・谷口ケイ登頂・サマ村清掃の模様を映したビデオをながし、実際の現場の雰囲気を感じとってもらいました。ビデオで、谷口ケイさんがマナスル山頂において日の丸を掲げるシーンでは盛大な拍手が会場の中に湧き起こり、サマ村の清掃で村人が薪とゴミとの区別がつかず捨てようとしているシーンでは、笑いが起こりました。

【野口隊長の話】

・4年間のエベレスト清掃が終わったとき、肉体的にもとてもハードなことだったし、シェルパ3人の犠牲やそのほかたくさんの犠牲を払ってやってきたので、もうやらないと思っていた。そんな時シェルパ達に、エベレストだけではなくネパール全体が汚い。我々もやるからやろう、と言われ、やろうと思った。

・今から50年前、日本は戦争に負けて国全体の自信がなかった。そんな時、8000m峰であるマナスルに日本人が初登頂し、大きな勇気をみんなに与えた。マナスルは日本人にとって、そんな山だと知った。

・マナスルは非常に雪の多い山ですが、4月の終わりなのに気温の上昇のせいで水のような雪がたくさん降る。何回もヒマラヤに来ると、身体で温暖化を感じる。このことを伝える使命を感じた。南太平洋に浮かぶ「ツバル」という国は、温暖化による海面の上昇で消滅の危機にある。海面の上昇には、どんどんと溶けていく氷河も関係しているので、氷河のあるネパールはその国のように、地球温暖化を訴えられる国でもあるのです。



・今回一番嬉しかったことは、サマ村の人々が話をすることで我々の考えを受け入れてくれ、積極的に清掃に取り組んでくれたこと。地元の人たちがやる気を持って取り組んでくれたことが本当に嬉しい。

・このことをヒントに、山から村へと下りて行きたいと思う。ルクラからナムチェ・クムジュンへとクリーニング・キャラバンを行いたい。それをやる上で大事なのは、システム整備と環境教育。学校等で環境教育を行いそこから村全体へと広げていきたい。

・田部井淳子さんと、サマ村でマナスル・ファンデーションを作ろうという話をした。教育に主眼を置いた基金。50周年のこの年に、パーティのような形だけのことではなく中身のあることをしたい。ヒラリーは学校や診療所を作ったりしてクンブエリアの発展のために尽くして来た。日本人はこの50年間、なにもしてこなかったので、次に繋がるような中身のあることをしていきたい。

・トイレに関しては、システムを早急に作る必要がある。エベレストにはシステムがあるが、ヒマラヤのほかの山には全くシステムがないので、氷河の中にうんちが埋まっている状況だ。氷河にはバクテリアがいないので、分解されずにそのまま残ってしまう。それが少しずつ溶け出し川に流れていったものを、村人が飲むことになる。登山隊は入山料をたくさん払っている。その中から、ネパール政府はトイレのシステムを作って欲しい。

【サマ村代表:ビル・バードルの言葉】

・ 50年前、日本人の登山家が我々の村にやってきて成し得たことが当時の日本人に大変な勇気を与えたように、50年後の今、再びやってきた日本人が、今度は我々に大きな勇気を与えてくれました。

【質疑応答】
エベレストの清掃後、アジアの国々の環境に対する意識に変化はあったのか?

特に変わったのは、韓国隊。昔はゴミに対して無頓着だったのが、現在は清掃隊まであるほど。
日本隊もここ4~5年は大きく変わっている。中国隊は、まだまだこれからだという感じがします。

環境教育のシステムを作ることに関して、政府との協議は?

政府側には、これから提案をしていく段階。ただ、その前に自分たちに何ができるのかを考えて欲しい。富士山でもそうだったが、ローカルなところでできることはやる。そこから政府に提案をしていったほうが早いこともある。

エベレスト4回の清掃で、どれくらいのゴミを回収したのか?

約7,7トン

今回、50年前の日本のゴミはあったのか。また目立った国のゴミは?

50年前のゴミは見つからなかった。
目立ったのは、韓国・日本・ヨーロッパ。ただし、缶などは錆びてどこの国のものか判別できないものが多かった。また、ベースキャンプからポーターが荷物を上げ下げした時に食べたものや落としていったものも多かった。

【会見に先立ち】

サマ村にある唯一の学校、ガウリ・シャンカール・スクールは、通学制にすると親が子供を働かせてしまい学校に来られないことがあるため、全寮制の学校です。この学校では現在、5歳から15歳の生徒26名が学んでいます。会見をした校長のビル・バードルと村の若いお坊さんは、村を変えていくためには子供達への教育が必要だと考え、昨年、今までの学校を新しい制度にして再開校しました。彼らの村を変えたいという一生懸命な思いに打たれ、サマ村を去る前に野口はこの学校に米2トン、そしてノートや鉛筆、教科書などの大量の文房具を寄付しました。

5月27日 ベースキャンプ・マネージャー 阿久津千尋

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