2007年冬ヒマラヤ , トレーニング・体調管理 , ヒマラヤ

2007/01/10

ロブチェピーク登頂記

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 カラパタールに登頂し次の目標はロブチェピーク。1月7日を登頂予定日にしたが、冬型の低気圧の影響なのか、気流が乱れ、アタックを一日延期。6日、ディンボチェ村に下り待機。しばらく悪天候になるかと思いきや7日早朝から晴天。一気にディンボチェ村からロブチェピークのハイキャンプ(約5600m)に向かう。途中、強風の影響で登頂を断念した英国人女性と出会う。開口一番「とんでもない風だったわぁ。早く降りて温かいスープを飲みたいわ」。その言葉にこりゃ苦労するぞ!と気持ちを引き締めた。14時過ぎ、ハイキャンプ着。

ロブチェピーク登頂

ロブチェピーク登頂


 夜には風が強くなるかと覚悟していたがピタリと止み辺りはシーンと静まり返る。テントの中で食事が始まるが、山小屋とまた違った雰囲気。アタックを目前に緊張するものの、シェルパ達と馬鹿話で盛り上がる。テントから顔を出して驚いたのが満天の星空。寒いのを我慢しながら眺めていたらいくつもの流れ星が現れては消えた。4時起床なので早く寝ようと努力するが、興奮なのか、こうしてヒマラヤのいられることに嬉しくて仕方ないのか、ワクワクして眠れない。アタック前夜の緊張感がたまらなく好き。

 1月8日、4時起床。風まったくなし。完璧なアタック日和。5時半アタック開始。一時間半ほど岩場をつめ、氷河にでる。ここでアイゼンを装着し氷壁を慎重に進む。ガリンガリンに凍りついた氷河にアイゼンがザクザクと快適に刺さり順調に高度を上げていく。ロブチェピークは過去に4回登頂しているが、今回が最も氷河の状況が安定している。そしてなによりも天気がいい。ヒマラヤ入りして2週間ほど経過しているが一度も雪に降られていない。

ロブチェピーク登頂

ロブチェピーク登頂


 途中、平賀カメラマンが遅れだし、待っていて寒くて仕方がなく、ただ高山病なのかと心配したらなんの事無く「けんさん、しゃりバテ(お腹空きすぎてバテるこち)です。お腹すいて歩けません」だって。アホか。しかも山頂直下で。そこで「ダメだよ!アタック中にしゃりバテなんか聞いたことないぞ!そんなわけないだろう!」と丁寧にやさしく怒る。「けんさん、チャパティー(ネパールのパン)ありましたよね」「山頂直下でパン食べる奴がいるかよ!食べさせないぞ!」とのやりとりが続いたが本当に泣きそうな顔してくるので、山頂直下の不安定な急斜面でみんなでチャパティーを食べた。そうしたら「いや~快適な登山ですねぁ~」と呑気なものだ。シシャパンマに引き続き山頂直下で平賀君に怒鳴る(しかしとても優しく丁寧に)のも定例となってきた。予定外の昼食を済ませそこからまた慎重に一歩一歩進み11時15分に登頂!

ロブチェピーク登頂

ロブチェピーク登頂

 目の前にエベレストがドーンとその雄姿を現した。日本を発つ前は正直、体の状況からして6000m峰の登頂は厳しいと感じていたが、ヒマラヤ入りしてから日々、体調が回復していくのが分かった。日本にいる時はエネルギーの放出ばかりだが、ヒマラヤではエネルギーを頂くもの。そしてロブチェピークに登頂したことで、チョモランマへのリベンジになんとか望みを繋げることができた。「たかが6000m峰に登って喜ぶな!」と思われるかもしれないが、1つ1つの積み重ねが世界最高峰へとつながっていくものです。慎重に下山し14時半ハイキャンプに到着。テントなどをすばやく回収しディンボテェ村へ。途中、雲海が美しくまた登頂できた喜びに浸りながらしばし見とれていた。18時半、フラフラになりながらディンボチェ村に到着。あ~約13時間も歩きっぱなし。心底疲れましたが、ただなんとも心地よい素敵な疲れに朝までぐっすりと深い眠りにつきました。

ロブチェピーク登頂

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