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2007/03/23

ネパール・カトマンズ入り

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 3月20日に日本を発ち 21 日ネパールの首都であるカトマンズ入り。共にエベレストの山頂を目指すシェルパ達と合流。シェルパ頭はクリシチナ・タマン。彼とは 10 年前のエベレスト初挑戦の時からの付き合い。 99 年ネパール側からエベレストに登頂したときも一緒だった。

 そしてもう一人の仲間はペンバードルジ・シェルパ。彼とはエベレスト清掃隊から一緒になり、 200 3年にエベレストの世界最短時間登頂を目指したいと私に相談があり、ベースキャンプから 15 時間ほどで山頂に到達したいとの計画に驚いた。しかし、外国人登山家のサポートばかりさせられていたシェルパが自ら自分の冒険をしてみたいと言ってきた。応援する側にもリスクがある。確かに反対する声もあったが、私はペンバドルジの冒険に賭けてみた。そして 200 3年、ペンバドルジは世界最短時間でのエベレスト登頂に成功。成功後、カトマンズでは盛大にパレードが行われ彼はネパールでスターになった。共産ゲリラがテロ活動を繰り返し多くの人々が死んできた。ペンバドルジの成功は疲れ果てていたネパール人に勇気を与えたのだろうと思う。私はそんなペンバドルジを誇りに感じるし、またこうして一緒に冒険をすることに大きな喜びを感じている。

 久々のカトマンズだが、ホテルの門や店が閉められていた。我々がネパール入りしたその日にインドの国境付近でマオイスト(共産ゲリラ・毛沢東派)の熱狂的な支持者と、永年マオイストに搾取されてきた住民との間で乱闘が起こり発表では 27 人の死亡。実際は 50 人以上が死亡したのではないかといった情報も流れた。カトマンズではマオイストがホテル経営者を誘拐し、寄付金を出せと要求。拒否したらその経営者に集団暴行を加えた。怒ったホテル経営協会が国に安全を身の安全を保障してほしいと要求。国がマオイスト対策に乗り出さないのならば明日からホテルは「ストライキに入る」と宣言。そうなれば私も宿泊しているホテルから出て行かなければならない。

 慌てたが朝になってみたら経営者協会側と国、マオイスト側が協議しとりあえずは落ち着いたようだが、このマオイストの問題は中東のヒズボラと同じで政府にテロ組織を抑える力がないからと、妥協案としてそのテロ組織を政党として迎え入れるのだが、そもそも彼らはテロ集団。都合が悪くなれば武力に訴える。そして厄介なのが PLO と同じようにマオイスト内部が分裂しそこでの争いが始まった。アラファートのようなカリスマ的なリーダですらまとめられなかった PLO 。そしてハマスのような過激派がテロ活動を展開していく。ネパールが同じ過ちを繰り返さなければいいのだがと願ってみても、嫌な予感がする。

 このマオイストの問題はこれからさらに深刻になっていくだろう。次の選挙でマオイスト党が負ければ彼らは再びテロ活動によって揺さぶるだろう。かといってマオイストを根絶するほど国に力がない。しかし、テロ組織相手に妥協を繰り返すのは問題の先送りとしかならないだろう。

 今月末に自衛隊が停戦監視団としてネパール入りするが、武器を持たず大丈夫なのかと心配になる。せめて自身の安全を守る武器保有は認められるべきだと思うが。日本国内でも PKO や停戦監視団で現地に行く自衛官に対して「武装するべきではない」といった意見もあるが、「それならばあなた方が丸腰で行ってみろ」と言いたい。どれだけの恐怖か。世界にはネパールに限らず国連の介入によって解決を望む国々が多いのも事実。ネパールのマオイスト問題。国連の停戦監視団の活躍に期待したい。

 22日、カトマンズにて記者会見を行った。記者会見では「ネパールの治安悪化で経済的悪化、また教育、環境問題への取り組みも停滞したまま。いつまで同じネパール人同士が殺しあっているのか。ネパールの環境破壊は深刻だ。大気汚染、水源地汚染、伐採による土砂崩れ、ゴミ問題、温暖化によって氷河が溶け出し洪水の危機、などあげたらきりがない。今こそ目の前の問題に取り組まないと、いずれ大量の人々が環境破壊によって死ぬ。ネパール人同士が殺し合いをしている場合じゃない」と訴えたがどこまで伝わったか。この当たり前のことがなかなか伝わらない。しかし、諦めてはいけない。ネパールの友として環境問題から平和を訴えていきたい。

 

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