2007年エベレスト清掃登山 , レポート・インタビュー記事

2007/04/29

複雑な現場状況。ABCからの入電。

ノースコルでの高所順応のための宿泊を終えた野口隊から電話がありました。

25日ABC⇒ノースコル⇒ABC
26日ABC休暇
27日ノースコル(7,000m)1泊
28日ノースコル⇒ABC(6,500m)

25日のコースタイムは10年前に登ったときよりもはるかに早く、4時間50分でABCからノースコルに辿り着いたという。ちなみに10年前はなんと7時間以上かかった道のりだ。
高所での順化はうまくいっていると思われる。しかし、この、ノースコルに言った頃から野口の体調に異変が。
咳が止まらないのだ。ヒマラヤは非常に乾燥していて、尚且つ空気が冷たい。喉をやられやすいのだ。電話の最中も時折、咳で会話を中断するほど。長くしゃべることができない。

27日に再度ノースコル(7,000m)へ向かう。今度はノースコルで1泊。高山病に極力ならないように6時間かけてゆっくりと登る。
このノースコルに異変が。登山隊が多く入っているため、テントが隙間なく張り巡らされている。その数200以上。10年前は確か20張り前後だったと記憶する。上部キャンプの幕営地としては比較的フラットで安定した場所のノースコルだが、200張りということは通路を確保するのも難しいのではないだろうか。
野口の報告によると、そのテントの中には食堂を作り、ダイニングテーブルや椅子まで持ち上げている隊があるという。ここでは通常、コッヘル(鍋)に積もった雪や氷を入れ溶かし、アルファ米にお湯を入れれたり、乾燥したお餅を水で戻し食べたり、食欲が無い人はスープだけしか飲まないといった感じの場所だ。
そこに椅子やテーブルまでとは、人間どこまで快適さを求めるのだろうか。ちなみに野口隊はダイニングテーブルを運ぶような労力はかけず、いたって普通の登山隊です。
ちなみに200張りのテントがあるノースコルはトイレの場所が殆ど確保できません。野口隊はテントとテントの間で用を足すことにしているそうです。
その夜、さすがに高所での宿泊は頭痛でまったく寝付けなかったとのこと。初めての7,000mでの宿泊ほど苦しい物は無い。一晩中うなされ、横になりながらも体は落ち着かない。「早く朝になれ!」そう思いながら一晩過ごす。
この2回目のノースコルで野口は多分肋骨を1本折っていると思われる。息をすると肺が痛く、以前咳で肋骨を折ったときと全く同じ症状だという。痛みで息がし辛い。高所では深刻な症状と言える。本人は「ま、大丈夫でしょう。できるとこまで頑張りますよ」とは言っていたものの、辛そうな声だった。

そして残念なニュースが3つ。

1つ目はネパール側サイドから登頂を狙っているグループの一つが雪崩に巻き込まれた。C3付近7500m付近でネパール人(シェルパ)が一名亡くなったとのこと。

2つ目は野口隊のパサン・ラム・シェルパ(ガイドを目指す22歳の女の子)が持病の腰痛が悪化。現在ABCで杖をついてようやく歩ける程度という状況。
腰痛を患ったパサン・ラム・シェルパは野口に泣きながら報告してきたそうだ。彼女にとって初挑戦のエベレスト。エベレストにチャレンジできる大きなチャンスを掴んだにも関わらず、そのチャンスを生かせなかったとこは大きなショックだったのだろう。シェルパ達は競って有名な山に登りたがる。何故か。それはガイドという職業では「エベレストに登ったことがある」というのは名刺の肩書きのようなもので、ギャランティーや仕事の量が変わってくる。だからこそ意地でも登りたいのだ。
現在彼女はABCで療養しているが、BCまで下ることができないでいる。あと3~4日はABCにいることになるだろう。

そして3つ目野口隊のキッチンボーイ、マイラがABCで吐血した。理由は不明だが、急遽クライミングシェルパ2名を同行させヤク(毛の長い高所に強い牛)にくくりつけベースキャンプに下山させた。「本人はカトマンズに戻りたくない。最後までケン達と仕事がしたい!」といっているが、命に関わる可能性があるので30日に野口達がBCに下りたときにどうするかを判断したいとのこと。

エベレストでは色々な事態が起きているようです。電話口で野口が「話が長くなるからこのくらいにしとくけど、まだまだいろんなことが起きてるよ。」と言っておりました。
こういった極地では淡々と物事を進めていかなければなりません。判断ミスが命に関わる問題を引き起こします。毎日がその判断。6,500m以上の場所に2週間以上も滞在し、体力も低下している中で的確な判断をしなければならないとなると、心労も相当な物と思われます。
30日にベースキャンプに下り、約一週間をしっかりと休息し、次はもう頂上アタックです。体調を整え、体力をつけなければなりません。ベースでゆっくりと過ごしていただきたいものです。

さて、他の隊員はと言いますと。
谷口ケイさんはいたって元気。高山病も克服。またもやピンピン、アタックに向け準備はOKです。

カメラマンの平賀淳君
入山以来ずっと下痢。
その下痢ですが、進化を遂げているらしいのです。
始めの頃は紙を持って出掛けていたのですが、最近は手ぶらで用を足しに行くそうです。
どういうことか、それは石を使って拭き、雪を使って洗浄。「健さん!エコカメラマンになりました」と報告があったという。
特に「とんがった石が拭きやすい」らしいです。もし緊急事態にはお試しください。

以上最新のエベレストの野口隊情報です。

野口健事務所 マネージャー 田附(たづけ

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