2008年エベレスト清掃登山 , ヒマラヤ , 地球温暖化

2008/04/23

水が流れるベースキャンプ

水が流れるベースキャンプ

 4月20日にエベレスト・ベースキャンプで清掃活動を行ったが、私が最も驚いたのが、まだ4月中旬であるにも関わらずベースキャンプの至る所で川ができていることだ。私の経験では5月中旬から氷河が溶けベースキャンプに川が流れまたあちらこちらに水たまりができる。その度にテントの位置をかえていたのが遠征期間後半の5月中旬であった。しかし、5年ぶりにエベレストのベースキャンプ(ネパール側)に訪れてみたら、もうすでにアイスフォールから水が流れ大きな川となっていた。またベースキャンプの至る所でモレーンの下の氷河が溶けだし水がジワリジワリと湧きあがっていた。ガイドのアンドルジさんも「これはおかしいね。今の時期にこんなに水が流れていたら一か月後はベースキャンプは大変なことになるね」と話し、ダワ・スティーブンも「昨年も氷河が溶けだすのが早いと感じていたけれど今年はもっと早い。これだけ高温になってきたということだろうが、ベースキャンプから上部のアイスフォールの崩壊や雪崩が心配。昨年も雪崩の事故があったが、今年は昨年以上に注意しなければならない」と心配していた。
アイスフォールから流れくる大量の水
アイスフォールから流れくる大量の水

ベースキャンプの真ん中を流れる川
ベースキャンプの真ん中を流れる川

 アイスフォールの取り付きで清掃活動を行ったが、5年前には氷で覆われていた場所が露出しており、当時、見つけることが出来なかったごみを発見。アイスフォールに墜落したヘリの残骸であったり、また回収された缶詰の製造月日がなんと1962年であったりと、氷の下から出てくるわ出てくるわ。

1960年代のテントシューズ?とのこと
1960年代のテントシューズ?とのこと

1962年製造と記されていた缶詰
1962年製造と記されていた缶詰

 昨年の夏、エベレスト街道沿いはこのクーンブ氷河が急激に溶けだしたことによって洪水が相次いだと指摘されている。この時期に昨年以上に氷河が溶けだしているということは、今年の夏に再び悪夢が訪れるかもしれない。ベースキャンプでごみを回収しながら、ごみ以上に大きな問題があるとひしひしと感じていた。川の流れるせせらぎはまるで春の到来を知らせてくれているような、何も知らなければのどかな音なのかもしれないが、今の私には地球の悲鳴にしか聞こえない。
このテントも近々、引っ越さなければならない
このテントも近々、引っ越さなければならない

2008年4月22日 ディンボチェ村にて 野口健

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