2010年春ヒマラヤ , 自己責任と危機管理

2010/05/01

犬に噛まれて

カトマンズ市内で記者会見を終え、その翌日からバングラディシュに向かう予定でしたが、まずはバングラディシュエアーの機体のトラブルで13時ごろのフライトが22時以降に変更。まあ~そんな事はよくあることで驚きもしなかったが、20時に飛行場についたら「フライトはキャンセルだ!」と
一方的に告げられ「何で?」と尋ねれば「ダッカが大雨だ」とのこと。確かにカトマンズも夕方から激しい雨と雷で聞くところによればベンガル湾付近も大荒れとのこと。仕方無くカトマンズ市内のホテルに戻る。

予定では4月30日にバングラディシュのハシャリ村に向かう予定であったが、5月1日に変更するしかない。バングラ滞在が三泊四日から二泊三日となってしまった。今回はハシャリ村以外にも新しい個所に出かける予定であったが、う~ん、残念、今回はハシャリ村のみ。5月4日に帰国し、5日から地方で仕事が入っているので全体をずらすわけにもいかず。しかも、5日の仕事は早朝からとのことで、4日に成田に着いたらその日の夕方の新幹線で現地に向かわなければならない。

それはそうと、私・・・・実はツラギ氷河湖に向かう途中の某村で犬に噛まれていました。可愛い顔しながら、嬉しそうにしっぽを振りながら近づいてきたので、撫でてやろうと手を差し伸べたらいきなりガブリ。訳がわからない。だったら最初からしっぽ振って近づいてくるなって!!!

少量だけれど手首から出血。傷口自体は、まったくもって大した傷ではないのですが、問題は狂犬病。事前に予防注射打っていないし、聞いた話では狂犬病が発病すれば死亡率は100パーセント。噛まれた直後からその犬をしばし本気モードで監視し、ヨダレが垂れていないか、ふらついていないか、しかし素人ではそいつが狂犬病なのか、どうなのか分からず。

しかも、その村、犬だらけであちこちで喧嘩していて頭に噛まれたような傷を持った犬がいたりと実に嫌な感じなわけです。

平賀カメラマンは実に嬉しそうに「いや~野口さん、三日後には狂犬病が発病して終わりですね~大丈夫ですかぁ~」とニコニコ顔。不安を隠そうと平静を装っている僕に対しやたらと不安をあおってくる。死亡率100パーセントとなると内心穏やかであるはずがない。あれはピサンピーク登山を決行した私に対する腹いせであったに違いない。

平賀カメラマンに分からないように、こっそりと元獣医の山際大志郎氏に衛星電話で連絡し相談したら「ネパールはね、狂犬病が多いからね~ まあ~大丈夫だとは思うけれどね~発病したら確実に死ぬからね~できるだけ早く注射打ったほうがいいよ。発病する前に注射打てば助かるから。発病してからでは遅いからねぇ~」と言われてもこちらはヒマラヤ。病院などあるわけもなく、これから2000M以上も谷を登ってツラギ氷河湖に向かわなければならないのです(涙)。不安を引きずりながらツラギ氷河湖へ。

4月27日、カトマンズに降りたその瞬間、即病院へ。噛まれた後の狂犬病の注射、実はこれが大変だったのです。医者がニヤニヤしながら「噛まれる前の予防注射なら普通の注射だけれど、噛まれた後の注射はスペシャルだよ」と。

やたらと太い注射器(まるで試験管)が用意され噛まれた傷口の前後左右に時間をかけながらものすごく大量の液体を入れていく。血管に針を差し込んでいるわけではなく、肉と皮の間を横から針を差し込み液体を注入していくので手首がまるで水ぶくれのようにパンパンに腫れあがり最終的には水風船のようになってしまった。痛いは痛いがそれ以上に水風船となった我が手くびのその無残なビジュアルにショック。

唖然としている僕に医者は「半日もすれば腫れは引くから心配なく。これからあと5回、定期的に注射を打たなければならない。次は三日後に打ってください」と平然と言ってのけた。いやはや、なんてこった。

さらに驚いたのがこの注射、なんと1200ドル! 痛いは高いはで踏んだり蹴ったり。

3日後となればバングラディユ。仕方無くバングラの関係者に連絡をいれ病院の手配をお願いしました。今日、これからバングラディシュに向かいますが、洪水調査の前にまずは狂犬病注射が待っています。

「なんてこった」と悔いてもどうしようもありませんが、それにしてもあのワンコロ、なんでいちいち俺を噛む必要があったのだろうか? しっぽ振っていたじゃないか!あの愛きょうは何のための愛きょうであったのか。さっぱりわかりません。

しかし、今更ながらに「あのワンコロは許せん!」と蹴りの一発ぐらい見舞ってやっても罰は当たらなかっただろうに。

しかし、全ては手を差し出した私の自己責任。 以後、どんなに可愛い顔をしながら、愛きょうをムンムンと撒き散らしながら近づいて来ようとも「私は決して騙されませんぞ!」と肝に銘じたわけです。

「全ての経験には意味がある」と誰かが言っていた。きっといつの日かこの経験が役立つ時が来る、そう信じてバングラディシュに向かいます。

皆さん、噛まれる前にぜひ、事前の予防注射をお勧めします。

2010年4月30日 カトマンズの飛行場にて 野口健

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