6月15日(土)産経新聞朝刊、書評倶楽部に「橋本龍太郎外交回顧録」の書評が掲載されました。
以下、ぜひ、ご覧ください。
「橋本龍太郎さんに私が最後にお会いしたのは2006年4月、お亡くなりになられる3カ月前のことだった。お会いするなり、少年のような優しい表情で「1月はスタンフォード大学でペリー元国防長官と進まぬ辺野古沖移設について議論をした」「2月にはインドのシン首相と対中問題や金融政策について話し合った」「3月にはメキシコで行われた第4回世界水フォーラムにてアジア太平洋地域の水問題に取り組むための新しいネットワークを作った」と語られていた。龍さんは政治家を辞められた後も日本の進むべき未来を日本のあるべき姿を真剣に考えておられた。それは逆に言うと海外の指導者たちからも議論をしてみたい、知恵を交換したいと思える指導者が日本にいたということなのだろう。
本著は日本国際問題研究所が2003年に発行したインタビューを基に書かれている。橋本外交は冷戦後に揺らいだ外交機軸である日米同盟を普天間返還合意、日米安保共同宣言で再度強固なものとするだけでなく、台頭する中国やインドを牽制(けんせい)するための対ロシア外交、フランスとの協力関係の構築はドイツを引き込む戦術であり、時としてイギリスを孤立させるための戦略とも読み取れる。また、フランスとの関係強化はアメリカとの衝突の際の緩和剤としてのカードとして使うなど日本外交の幅を戦略的に広げ展開している。
政権が代わり対米、対沖縄関係は「最低でも県外」という安易な一言で迷走した。そして今度は「慰安婦問題」。このような時代だからこそ、したたかなまでに戦略的な外交交渉を実践してきた龍さんの回顧録が注目を浴びているのかもしれない。〈本音と建前〉の中で〈本音〉ばかりが先行しがちな日本外交において、龍さんの外交には時に
〈建前の中に国益につながる本音のいやらしさ〉があった。本著は外交に興味のない方にも戦略の立て方、物事を動かす多角的な考え方を教えてくれる。ご一読いただきたい。」
(五百旗頭真(いおきべ・まこと)、宮城大蔵編/岩波書店・2100円)
http://sankei.jp.msn.com/life/news/130615/bks13061507400002-n1.htm