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産経新聞連載「直球&曲球」掲載されました

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2016/09/22

産経新聞連載「直球&曲球」掲載されました

本日の産経新聞連載の記事です。植村直己さんに追いつきました。「歳」がです。不思議な感覚です。
MBSナウというニュース番組でアナウンサーに「野口さんは何歳まで山に登りますか」と聞かれとっさに
「43歳まで」と答えたのがついこの間のような。あれから20年以上たったのですね。

産経新聞連載 2016年9月22日掲載
【失うものの中から得るもの】
この夏、43度目の誕生日を迎えた。僕にとってこの年は感慨深いものがある。学生の頃、ニュース番組で「何歳まで山に登りたいですか?」と聞かれ、
とっさに「43歳まで」と答えたことがある。植村直己(なおみ)さんが43歳のときにマッキンリーで遭難したから。

高校時代に落ちこぼれた揚げ句に学内で暴力事件を起こし停学処分に。その停学中に植村さんの著書「青春を山に賭けて」と出会う。
植村さんは1人コツコツと山に登り続け、結果的にそれが「エベレスト日本人初登頂」「世界初5大陸最高峰登頂」という大きな冒険につながっていく。
ひとつのことをコツコツと積み重ねれば、こんな自分にも何かができるのかもしれない。植村さんの生き方に救いを求めるかのように僕も山に登り始めたのが15歳のときだった。

それ以降、43歳までは山に登り続けると心に誓っていた。あれから、ひたすら山に登り続けてきた。
もちろん、挑戦から得たものもある。一方で多くの仲間を山で失ってもきた。一人一人の顔を思い浮かべようとしたが、多すぎて容易ではなかった。
昨年末、最も信頼し、頼りにしていた山仲間が山から落ちた。山仲間の死に慣れていたはずなのに、彼女の遭難死の知らせには胸に穴が開いたような虚脱感に襲われた。
鏡に映る自分の顔が老人のように老け込んでいた。仲間の死はその人数分だけ自分を老いさせる。
挑戦には「得る」ものもあれば「失う」ものもある。山登りを続けるかどうか葛藤したときには決まって「43歳までは」と自身に言い聞かせた。
そしてついにその43歳に到達...。

先日、ヒマラヤトレッキングに出かけてみた。8000メートル峰を眺めながら「これからどうしようか」と感じたかったのだ。
アンナプルナ峰を見つめながら気がついたことがある。それは「43歳まで」から解放されている自分。
肩の力がスーと抜け、まるで花畑を目の前にしているかのような安らぎがあった。それは「植村さんからの独り立ち」だったのか。
下山中はまるで遠足帰りの小学生のような軽い足取りであった。「失うものの中から得るものもある」のかもしれない、と。
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