産経新聞に野口健の連載が掲載されました。
2025年5月29日掲載
「救助有料化」が登山者の自覚促す
富士山に登っていた20代男性が8合目付近で身動きできなくなり救助を要請した。残雪期のこの季節にアイゼンすら持っていかなかったことにあきれ果てるが、許せないのは、この男性が、救助要請を出しながら自力で下山し、救助隊に連絡することなく帰宅したことだ。下山を知らされないまま救助隊は救助活動を継続していた。
救助活動には絶えずリスクが伴う。人が遭難する場所に向かうわけであり、地形や気象条件が厳しいことが多い。自らの危険を受け止めつつ遭難者を1分1秒でも早く助けたいと危険な遭難現場に向かうのだ。
勝手に帰宅したこの男性は、そんなことも想像できないのか、と怒りを超えてむなしくなってしまう。
過去には、テント内で料理を作っているときに指をやけどしただけで救助要請を出し、ヘリによって下ろされた登山者もいた。まるでタクシーを呼ぶ感覚である。
一部登山者の中には「助けてもらうのは当たり前」「助けてもらってもタダ」という人がいるのかもしれない。しかし、前述したように救助にもリスクがある。北アルプスでは遭難者を救助しようとしたヘリのプロペラが岩に接触し墜落、パイロットやレスキュー隊員が殉職した。埼玉の秩父でも同様にヘリが墜落し、多くの犠牲者を出した。
そこで、埼玉県は救助費用の一部を遭難者に負担してもらおうと、救助ヘリが飛んだ場合は、5分5千円(1時間の捜索で6万円)を請求することにした。
救助有料化に対し、「遭難者が救助要請するのをためらってしまう」などと一部の山岳関係者の中からも批判的な意見もあるが、何を寝言を言っているのかと思う。そのために山岳保険があるのだ。種類はさまざまだが2千円から加入できるものもある。
山に入れば誰もが遭難する可能性がある。自分も遭難するかもしれないとリアルにイメージし、備えること。そして忘れてはならないのは山登りの大原則は自己責任であるということだ。
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