2000年エベレスト清掃登山 , ヒマラヤ

2000/05/07

ABC滞在

今日こそ、ノースコル行きと思っていたが、昨夜から雪、一日中パラパラと降っていた。その為、私もシェルパもなにも出来ず。今年のチョモランマの天候はどうもおかしいぞ。

 ネパール人スタッフの中で97年のチョモランマから私とコンビを組んでいるクリシチナ・タマンという男がいる。その彼の三女が生まれた。今回の遠征出発直前、明日にでも子を産みそうな彼の妻を残してクリシチナは私と行動を共にしチベットへとやって来た。「チベット行き、本当にいいのか」と彼に聞いたら、「別に自分が生むわけじゃないし、仕事だから」と男としての返事を頂いた。しかし、ここチョモランマではどことなしか落ち着かないクリシチナの姿が目につき、衛星電話を貸してやった。そして女の子が5日前に生まれたことが分り、次に子と妻の健康を確認し、安堵感に包まれたような表情を見せた彼の後姿は旦那様であり、また、父親の姿になっていた。妻も子もない私には到底立ち入る事のできない領域がそこにはあった。嫉妬心に近い感情なのか・・・。

 すかさず彼に「また女か!全部女じゃないか」と意地悪をいってやったら「女は大学に行かなくてもいい。学費がかからないから助かったよ!」とこれまたスッキリした顔で言ってのけた。そして二人テントの中で無事子の出産を喜び合った。

 足を腫らしたシェルパは、今日ザンムー(ネパール国境の町)へとジープで下りていった。カトマンズで無事に治療されてくれればいいのだが・・・。

 他の隊からの情報によればこれからしばらく天候が崩れるとのこと。私はABCで完全に不眠症に悩まされ、あまり長期間ABCでの滞在は疲労蓄積以外の何物でもない。今年はどうも高所に体がスゥーと順応しない。寝付けず、またなんとなしに体に力が入らない。寒さがまたぶり返した。シェルパ達も今年のチョモランマは寒いと話していた。

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