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5月25日、永かったヒマラヤでの生活が終わった。
シャンボチェからヘリコプターでカトマンズに降りた。ベースキャンプからシャンボチェに向かうトレッキングルートは、来たときとはその姿を変え、新緑であふれていた。高山植物も花を咲かせ、新芽も開き、登山シーズンを終え、やせ細ったヤクたちも今ではノンビリと芝を食べている。
シェルパたちも過酷な任務を無事に終了し、夜は歌に合わせて、シェルパダンス特有のステップ音がキャンプ地に響き渡る。自然も動物も、そしてそこに住む人々、そして僕達、全てが開放される瞬間。5月下旬のヒマラヤはそんな雰囲気にあふれ、僕は大好きだ。
途中、タンボチェ村にある加藤保男さんのエベレスト春秋厳冬期登頂記念碑に立ち寄った。82年、加藤さんは厳冬期のエベレストに単独登頂に成功したが、下山中に消息不明となってしまった。加藤さんの功績は永遠に語りつがれるだろう・・・。加藤さんの眠るエベレストを少しでも元の美しい姿に戻したい。
カトマンズのトリブバン空港に着いた時に目に飛び込んできたのが、われわれ清掃活動を称える垂れ幕。さすがに感動した!心から
「あ~ 俺らはやったんだ!」
と満足感に満たされた。その夜、カトマンズの日本食レストランでうどんを食べた!
「美味しかったよ~」
5月27日、カトマンズ郊外の丘の上にあるカトマンズ盆地を見下ろせるホテルで記者会見が行われた。何度となく開いてきた記者会見。記者の面々もすでに顔見知り。最初はアットホームな雰囲気で始まった記者会見だったが、しばらくたつと僕の発言中にも質問が繰り広げられるようになる。 生き生きとした雰囲気のネパール記者会見はいつでも楽しい。記者会見の後には、今回の活動を記念して植樹際が行なわれた。翌日、各新聞の一面に我々のエベレスト清掃活動がデカデカと紹介された。
午後にネパールの観光省に呼ばれ、歓迎された。日本大使館の神長大使からも、 清掃登山を始めて3年目。秋には久しぶりに8000m峰の頂きに挑む。その峰の名はシシャパンマ(8012m)。エベレストに登った仲間達と共に8月下旬、日本を発つ。これからシシャパンマ挑戦までの間、どのように過ごすのか、今のままの自分では挑戦する資格などない。初心に戻り、がむしゃらにトレーニングに明け暮れ、再び、あの生への戦い、そして自身への限界に挑んでみたい。 |