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今夏の富士山樹海清掃報告

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2005/09/23

今夏の富士山樹海清掃報告

 今年も6月からスタートした富士山麓青木が原樹海での清掃活動。すでに3000人弱が集まり回収したゴミは40トン。富士山の清掃活動を始めて5年目になるが、年々参加者が増える。そして参加者が全国から集まる。樹海での清掃活動のため、あまり参加者が多いとコントロールできなくなるのと、ガラスや注射針など危険なゴミが多いために富士山クラブのインストラクターが同行しながら安全に清掃活動が行えるためにフォローしなければならない、どうしても一回の清掃活動では人数を制限せざるを得ない時もある。参加募集人数より大幅に応募が殺到するときは抽選させて頂くが、なかには「ボランティアで富士山のゴミを拾うのに抽選とはなんだ!」とお叱りの声を頂くこともある。確かにその通りで、我々としてもできるだけ多くの方々とゴミを拾いたいし、参加者なくして富士山青木が原樹海のごみゼロ作戦はありえない。一緒にごみを拾ってくださる参加者は戦友であり大切な大切な仲間だ。これだけの参加者、富士山の清掃活動を始めた5年前では考えられない出来事だ。清掃活動を行うたびに富士山は日本人に愛されていて幸せものだなぁ~と羨ましくさえ思うものです。



  今年も不法投棄されたタイヤ、廃材、バッテリー、注射器といった医療廃棄物、そして使用済みの紙おむつ、廃車、などごみにまみれた。大きく重たいごみを担いだおかげで腰、背中の筋を痛めたし、首が曲がらなくなりました。その度に針を打ち、整体マッサージをして頂いた。樹海での清掃活動はなかなかの格闘技。過酷です。それでも毎週行えたのは参加者の笑顔。みんな、まるで遠足に出かけるかのように楽しそうに、そして必死にごみを拾ってくださる。中には赤ちゃんを背負っての参加者もいる。今年の最年少参加者は一歳半。そんな参加者の姿に救われた。また、富士山クラブのメンバーの支え。これも大きかった。参加者が回収したごみを我々(富士山クラブ)の活動の拠点である「森の学校」に積み上げるのだが、実はこの後にもうひと勝負がまっている。集められたゴミ袋1つ1つを確認しちゃんと分別されているのかを確認。可燃、不燃が混ざっているものは仕分けしなおし、その後にゴミ処分場までトラックに積み運ぶのだが、これが重労働。富士山クラブの現地スタッフは「いや~今日も凄いねぇ。よし、運ぶぞ!」といつも気合満々。本当にありがとうございます。頭下がります。

 参加者や富士山クラブのメンバーに感謝しながら、樹海でごみ拾いを行うわけだが、最近短気になってきたのか、不法投棄されたごみを回収しながら、捨てた連中を想像しているうちに腹が立って仕方がなくなる。一体彼らは、どんな顔しながら夜中にトラックからゴミを分投げているのだろか、少しも罪悪感がないのだろうか、ごみを捨てることで商売しているのだろうが、人生一度しかないのに、そんな生き方で悔いはないのか、なんの為に生きているのか、僕には分からない。アスベストや薬品、農薬を捨てた彼らはその後に起きてしまう土壌汚染から始まる深刻な被害まで想像がつかないのか、だとするならば1から義務教育を受けなおさなければならないだろうし、分かっていてやっているのならば、それこそ人間以下の最低な輩だ。人生考え直したほうがいい。
 
 ごみ拾いもいい。ただ、それだけではダメだ。ごみ拾いをきっかけにごみを捨てられない社会的な環境を作らなければいけない。1つには監視だ。悪い奴は捕まえなければならない。環境省や山梨県のレンジャー、そして県警、地元住民の監視も必要となってくる。富士山クラブといったNPOの役割でもある。今年1月にアフリカ・ケニアに出かけたがNPOのようなボランティア団体がケニア政府から委託されてレンジャーと共にパトロールを行っていた。アメリカの国立公園もレンジャーと地元や全国から集まるボランティア団体が一緒になって国立公園を守っていた。国や、地元の県、市町村だけの責任ではない。そこに地元住民、ボランティア団体など全てが連携して取り組まなければ樹海は100万年たっても不法投棄の山だ。そして土壌汚染が水源地を汚染し、最終的には人々の口に入る水が毒にまみれる。誰が困るのか、地球じゃない。人間です。人間がやってしまったことは、人間が解決しなければならない。山梨県の山本知事が「不法投棄する業者は摘発する」と発言してくださった。期待したいし、我々も協力したい。いままでほとんど摘発されず無法状態となっていた樹海を含む富士山麓の実態。これはなにも富士山に関わらず日本全国ごみ、ごみ、ごみ。ごみ列島日本。どこでも同じ。



  2つ目には環境教育だ。せっかく総合学習があるのに、なかなか生かされていない。なかには本やビデオを生徒に見せて感想文を書かせるだけというのもあるとのこと。私自身全国で環境学校を開催してきたが、そこで感じたのが地元の子供たちが自分たちの身近な自然に触れていないこと。素敵な自然に囲まれているのにもったいない。そして高校を卒業したら都会に行きたい、それまでは田舎で我慢といった声の多さ。富士山の麓に住む子供たちにも富士山の美しさを実体験で感じてほしい。よくモラル、モラルと言われるがモラルを作るのは教育。よく学校の先生方から「どのように環境教育していいか分からない」といった相談を受ける。いままでなじみがなかった環境教育に戸惑うのも理解できる。環境教育の普及にNPOの役割がある。またNPOに限らずレンジャー、農業や林業、漁業といった自然を相手にしているプロもあるだろうし、現場で自然と関わる人々がみな先生になれるわけです。教育委員会の方々ももっともっと現場に生きるそれこそ生きている教材が沢山あるわけですから、利用してほしい。

  そんな事を樹海でごみ回収しながら考えているわけです、ごみのおかげで物事よ~く考えるようになりました。環境問題に携わる前、登山家として山頂のみを目指していた時にはまったく考えもしなかった人間社会のあり方。環境問題は自然が相手ではなく人間社会が相手であり、人間社会を知らなければそれこそ環境問題に取り組むことができない。ごみのおかげで私、少しは成長できたようです。ただ、いつまでもごみで成長したくない。これが本音です。
  10月から再び富士山清掃活動が始まります。次回はどんな仲間と出会えるのか、今から楽しみ。一緒にこの国、日本をよくしましょう!

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