シェルパ基金 , ヒマラヤ , レポート・インタビュー記事

2006/05/09

小西浩文さんインタビュー


小西さんは、1997年、2002年と、二回のマナスル経験があります。

野口健マナスル清掃登山隊に参加された思い?

ちょうど一年ちょっと前に、野口健くんから、小西さんマナスル登っていないので、良かったら行きませんか?という誘いがあってですね、自分の中でゴーサインがでましたので、参加しました。彼は、友人でもあるし弟のような存在でもあるので、自分に協力できることは当然やったほうがいい。それに彼がやっているシェルパ基金、ヒマラヤで亡くなったシェルパの子供さん達への教育とか生活のために NPO を作って活動していることに対して、自分はヒマラヤ登山中にパートナーであるシェルパを雪崩で亡くしていたので、本来やらなければいけない立場でもあったのに何も出来ていなかった。だから出来ることはやらせてもらうべきだなと思い参加させてもらいました。

清掃登山隊に対して?

自分が清掃隊をやる気は正直言ってないんですよ。何故かと言うと、清掃するのは当たり前で、ゴミを撒き散らすこと事態問題外だし、例えば家の近くでも、ゴミを拾うというのはやるべきことだと思うんですよ。まして自分が登らせてもらう山で自分がゴミを捨てるなんて問題外。ただ、他人が捨てたゴミまでを回収するなんて大変な労力とお金がかかるわけですよね。だからなかなかそこまでは踏み切れなかったのですが、自分も登らせていただく山であるし、彼がやろうとしている山を綺麗にするって言うことは、登山者としての礼儀、礼節として最高じゃないかと思うんですよね。

ヒマラヤのいろんな山に行ったと思いますが、ゴミの現状は?

当たり前ですが、登山者の数に比例しますよね。登山者の多い山は当然ゴミも増えますし、登山者の少ない山は当然ゴミも少ないという感じがします。マナスル自体、登山者が年間凄い数訪れる山ではないので、そんなにゴミがいっぱいある山ではないと思うんですよ。ただ、日本人が初登頂させて頂いた唯一の8000m峰で、彼と一緒にサマ村の人達にお話をお聞きして自分でも驚きましたが、彼らはやはり、これは日本人の山だろう、とはっきりと定義づけているしそういう印象を持っているわけですよ。そういう山に50周年というひとつの区切りに来させていただいて、自分らに出来ることはさせていただくということは、本当にいい話だと思います。そして、山を清めると言うことは、自分の心も清めるということがあるんじゃないかと思うんですよね。山の神様に対する礼儀。本来、自分の持っている目とか耳、鼻、意識、心、身体全てを清めるために山に登るって言うのが日本の山登りでしたから、マナスルという山にこういうご縁で、まして自分は二回来させていただいているので、自分に出来ることは当然やらせていただきたい、するべきだと思っています。

山頂を目指していく中で、マナスルの魅力と怖さはどんなところにあるのか?

8000m峰は、ネパール・中国領チベット・インド・パキスタンの四カ国にあって、それが14座あります。その一座がこのマナスルです。日本人が唯一初登頂した山です。私自身が感じるマナスルは、雄大で綺麗な山ですよね。人が見て感じる美しさ、厳しさ、気高さというものをマナスルという山には感じます。4年前に雪崩で80m落ちて助けていただいているわけですが、雪はやっぱり多い山ですし、雪崩の事故も過去にかなりの頻度で起こっています。これは全ての山について思うのですが、登らせていただければよし、登らせていただけなくてもそれはまたよし、もし機会がいただけるのならば登らせていただけませんか、と思っております。非常に気高く美しい山という印象をマナスルに対して持っていますので、スピリチュアルな山と言うその名前がぴったりの山という感じがします。

14座無酸素で登頂を目指すことに関して?

8000mの山を酸素を吸って登ると、酸素を吸う量にも寄るのですが、肉体的条件は6000mくらいになってしまうわけです。登山を志した15歳のときから一番感じているのは、親から授けていただいた心臓と肺、自分の身体で登らせていただきたいと。酸素を吸うと、より安全に、より楽に登れるわけですが、それはしたくないなというのがあるのです。自分の持って生まれた心と身体で登らせていただきたい、自分自身で最も心に忠実で一番どきどきわくわくする幸せな登り方が、無酸素なんです。人それぞれ、自分のお金を掛け時間を掛け人生を懸け山に賭けているわけですから、酸素を吸って登る登山家のことを全く否定する気はないです。もうひとつ、出来る限り自分の持っている登山家としての限界を伸ばしたい、というのが未だにあるわけです。やるのであれば他の方がやるよりももっと厳しい条件、もっと困難な条件を自分に課してやりたいというのがあるのです。そういうわけで、無酸素で登らせていただきたいと思っております。

厳しい気象状況の中でもうすぐアタックを目指しますが、現在の状況とこれからの展望は?

今の状況は、すでに 5 月 4 日の段階で5人のサミッターが出ているわけです。そういう現実がありますので、シェルパの人達も10人以上いるわけですから、何よりも雪崩、クレバスへの転落、頂上アタックへの全ての計算とコントロールをきちんとして、有酸素無酸素に関わらず、私を含め登る 4 人の日本人とシェルパ 11 人、合計 15 人で絶妙のチームワークを持って、絶対にあせることなく、着実に自分らのやるべきことをさせていただいて、あとは山の神様の許可をいただいて無事に登らせていただき、全員無事にカトマンズに帰らせていただき、無事に日本に帰らせていただければなぁと思っております。

何事も執着しすぎるとエネルギーをぶち壊してしまいますので、絶対にこだわっちゃいけないです。ただ、最後の段階では不屈のガッツ、精神力や集中力は当然必要で、それを発揮しなければいけない。人生最高の気合を入れて、落ち着いて、登らせていただき、下らせていただくということです。登山の第一の絶対条件は、全員が生きて元気で自宅に帰ることです。出来うれば登頂させていただいて、全員が元気に自宅に帰ること。そういうことを全員が心の中に持っているのであれば、いい結果は来てくれると思っております。

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