野口健記者会見

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エベレスト登頂

この度、「富士山・エベレスト同時清掃及びエベレスト登頂」を目的として活動をしてまいりました。3月20日(火)に日本を出発し、24日(土)エベレス トの玄関口であるルクラ村に入りました。4月5日(木)ラサ到着。10日(火)エベレスト・ベースキャンプ入り。19日(木)アドバンスベースキャンプ (ABC6,400M)に到着し、23日(金)安全祈願を行いました。26日(木)ノースコル(7,050M)にて高度順化。30日一端ベースキャンプに 戻り、5月9日(水)再度ベースキャンプを出発しチャンツェベースキャンプ(ABCとベースキャンプの間)入り。10日(木)ABC着。12日ABCを出 発しC1ノースコル(7,050m)到着。13日C1を出発しC2(7,600m)到着。14日C2を出発しC3(8,300m)到着。日本時間15日 AM1時C3を出発し、日本時間AM11時15分8848mのエベレスト登頂を果しました。今回の挑戦は1997年に初めてエベレスト(中国側)に挑み、 惜しくも登頂を断念した場所からの再挑戦でした。1999年にはエベレスト(ネパール側)から挑戦し登頂を果すと同時に、7大陸最高峰世界最小年記録を樹 立いたしました。(1999年当時)今回の登頂で、中国・ネパール両側からエベレスト登頂を果した8人目の日本人記録となりました。

野口健記者会見

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清掃登山

97年の初挑戦中に欧米の登山隊から、「エベレストをMt.FUJIにするのか?」と言われたのがきっかけで7大陸最高峰を制覇した後に、清掃登山をする 事で私の大好きな山々に恩返しが出来ればと考えました。2000年からエベレスト清掃登山を開始し今回で6度目となりました。

2006年5月には、日本人が一番かかわりの深い山であり、日本・ネパール国交樹立50周年記念事業の一環としてマナスル清掃登山を実施いたしまし た。マナスルでの清掃登山後、麓のサマ村の人々が集まり村の一斉清掃を始めた事は、驚きではありましたが、同時に私の行なった行動が地元の人たちに対して 少しでも良い影響を与えることができたことを大変嬉しく思っています。

先月の4月13日(金)に清掃登山を開始し、15日(日)には富士山・エベレスト同時清掃を開催いたしました。日本側は女優の若村麻由美さんを隊長とし参加者160名トラック5台分、約3トンのゴミを回収いたしました。

一方のエベレスト隊はベースキャンプにて約50kg、19日(木)アドバンスベースキャンプにて120kg、期間中の総計は500kgでした。前回 までの平均が約1.5tぐらいでしたので、確実にゴミが減ってきたのだと実感いたしました。ゴミ問題を含めた環境問題は一人ひとりが出来る事を実践する事 が大切だと思います。そして、ゴミの排出量を削減する事は、循環型社会づくりに不可欠であるばかりでなく、ゴミを減らすことは地球の温暖化防止にもつなが るものであると私は考えています。

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コイララ首相と

 

コイララ首相との会談及びアジア太平洋水サミット

5月28日(月)コイララ首相にも会わせて頂き今回の清掃登山の報告及び、エベレストが抱える環境問題や私の目から見たネパールの環境問題について意見交換をさせて頂きました。

その際、私が運営委員を務めている、「第1回アジア・太平洋水サミット」への出席を依頼するとともに、サミットでは現在ネパールやブータン等が抱え ている氷河湖問題を議題として取り上げ議論をしたい旨、お伝えをさせて頂きました。コイララ首相より水問題は非常に重要な分野であり、水サミットに対しネ パール政府として出席をする旨、お言葉を賜りました。

この「第1回アジア・太平洋水サミット」は、昨年3月21日に橋本龍太郎元総理がメキシコで行なわれた第4回世界水フォーラムで発案をされました。 橋本元総理は残念ながら昨年の7月にご逝去されましたが、元総理の発案に私も賛同をし、委員を務めさせて頂いております。サミットは本年12月3日・4日 に、森元総理を運営委員長として大分県にて開催される予定となっており、皇太子殿下、安部総理もご出席予定との報告を受けております。詳しくは、お手元の 資料をご覧下さい。

 

昨今の状況

さて、昨今、世界各地で異常気象が発生しております。私が行っていたネパール・カトマンズ市内では1944年1月以来63年ぶりに降雪がありました。ま た、登頂を目指したエベレストベースキャンプやアドバンスベースキャンプでも雨やミゾレが降っていました。降るはずのない場所で雪が降り、降るはずの場所 で雪が降らない。このような事は世界中でおきております。2003年フランスでは猛暑のあまり1万人以上もの死者を出し、他のEU諸国でも千人を超す犠牲 者をだしました。2004年にはインド洋大津波等がおこり、2005年アメリカではハリケーンカトリーナ等の大災害、そして2006年にはオーストラリア での大干ばつ等もありました。このように、世界各地で起こっている異常気象等による影響ですが、過去最大・過去最高気温等、記録更新が毎年繰り返されてお ります。もはや異常が異常ではない時代が来ているのです。そして、この異常気象の原因の一つとして近年、地球温暖化の影響がとりだたされはじめました。

私が、生まれる前年1972年「成長の限界」と題された「人類危機レポート」がローマクラブから発表されました。レポートでは今後起こりうるであろう危機を下記のように例えました。
「ある池に蓮が生えている。この蓮は一日で2倍に成長する。30日たつと池を全て覆い、池の魚は全滅してしまうのだが、29日目にはまだ水面が半分は残っ ているから安心だと構えている。実のところ、魚の命はあと一日しかない。人類も既に29日目を迎えているかもしれないのである。」

環境問題は目に見えて結果が出るものではありません。今日やったからといって、明日顕著に結果が出るわけでもありません。しかし、我々は自分の子や孫の世代まで責任を持たなければならない義務があります。

コイララ首相と

コイララ首相と

氷河湖に関して

UNDP及びICIMOD(International Centre for Integrated Mountain Developmentの略称で和名は国際総合山岳開発センター)の報告では2001年当時の記録としてネパールには現在3,252の氷河と2,323の 氷河湖があり、5年から10年の間に20以上の氷河湖が決壊の恐れがあると報告しています。その中でもツォーロルパ・イムジャ・ローワーバルン・ツラギの 4氷河湖が特に決壊の危険性があると報告をしております。氷河湖は決壊をすると、洪水が起こり多数の死者を出す恐れがあるのです。氷河の融解が加速してい る背景にはこのような地球温暖化の影響をヒマラヤ山脈も受けている証拠なのです。

報道機関によれば2035年には氷河が無くなる恐れがあるとも報告しています。氷河が無くなれば、その溶け水によって供給されていた水資源も枯渇す る恐れがあり、漁場や野生生物そしてネパールの国民の飲料水の供給も危機にさらされる恐れがあるのです。そして、ヒマラヤの雪解け水の減少及び枯渇はネ パールの国民のみならず、下流国にも影響を及ぼすのです。自然災害は何時発生するかわかりません。そして、地震等の突発的な自然災害により、氷河湖の決壊 等、二次災害を引き起こす可能性も秘めているのです。

先日のベルギー・ブリュッセルで行なわれたIPCC(気候変動に関する政府間パネル)第二作業部会においても、「氷河湖の増加と拡大」が問題視され ておりました。それを受け私はイムジャ氷河を訪れました。このイムジャ(IMJA)氷河湖は湖面標高5010mのエベレスト南方にあります。イムジャ氷河 末端に灰色の水溜まりが拡大し始めたのは1960年頃。

現在長さ1km以上、深さ90mにも達し、2800万トンの水を湛えるまでに成長しているのです。もしこの氷河湖が決壊すれば、チュクン村・ディン ボチェ村・パンボチェ村、タンボチェ村などが大打撃を受けると予想されます。村人、そしてトレッカーを含めればその犠牲は計り知れません。実際にイムジャ 氷河湖に向かう道中で村のシェルパ達が
「イムジャ氷河湖はどうなるのか?もし決壊すれば私達は全てを失う。ヒマラヤの他の地方で氷河湖が壊れ、村々が洪水に流されたと聞いたことがある。ここは大丈夫だろうか?」
と何度も聞かれました。それだけ地元民にとって氷河湖の決壊は恐怖なのです。

ヨーロッパアルプスでは、堰堤(えんてい)を設けたり、トンネルを掘って排水していますが、ヒマラヤはヨーロッパに比べ岩盤が軟らかく、また標高が 高く工事が困難なため、これらの対策が容易に実施できるとは限りません。また、いくつかの氷河湖では警報装置の設置をしていますが、警報装置はあくまでも 応急対応であってこれは恒久的な対応ではありません。

最後に

アジア・太平洋地域では、洪水等の水関連災害による2001-2005年の年間平均死者数は約6万人で、これは世界の水関連災害死者数の80%にもなります。アジア・太平洋地域がいかに水災害の被害を受けやすいかを物語っています。

オセアニア地方にあるツバルは地球温暖化の影響による海面上昇を訴え、各国の注目を浴び支援を求めました。ヒマラヤ山脈は人間に例えると頭です。そ の頭が狂えば世界中がおかしくなる可能性を秘めています。アジア・太平洋水サミットにて、この氷河の融解及び氷河湖問題について、現状を訴えると共に、 ADB(アジア開発銀行)・JBIC(国際協力銀行)・JICA(国際協力機構)等の機関と早急に協議し連携を取りながら、この危機的状況を回避すべきで あると私は考えます。

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