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2008/07/16
北海道洞爺湖サミット・確かな前進
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久しぶりのブログ更新です。永い間、お待たせしました。本当にごめんなさい。ヒマラヤ、バングラデシュの旅から帰国し洞爺湖サミットを終えるまでバタバタバターと全国を駆け巡っていました。北海道は毎週でした。その日々を乗り越えるだけで精一杯でした。ヒマラヤから帰国(5月21日)してからざっと数えてみると東京7回、北海道3回、兵庫3回、愛知3回、大阪2回、京都2回、横浜1回、佐賀1回、滋賀1回、石川1回、長野1回、栃木1回、山梨2回、岡山1回、千葉1回の合計30本の講演活動(シンポジウム含む)を行ってきました。(詳しくは
「野口健ニュース」
をご覧ください)その隙間にテレビ収録、新聞、雑誌、ラジオなどの取材が入り吾輩の処理能力を遥かに超え、氷河湖より先に私の脳みそが決壊。しかし、これだけ全国行脚したのは洞爺湖サミットに向けて私のメッセージを日本全国に発信することによって、その全国に発信されたメッセージが今度はブーメランとなって官邸など関係各位に戻っていくことを期待したからだ。
G8環境大臣会合特別シンポジウムにてIPCC議長 ラジェンドラ・パチャウリ氏と氷河の問題について訴えた
また仮にODAの予算の中から氷河湖対策に充てられるとしたらそれは税金であり、出来るだけ多くの日本国民にヒマラヤでの出来事を知ってほしかった。その上で税金を使ってでも国際貢献の一環として、また気候変動の加害者側として日本はやらなければならないことを多くの方々に理解して頂きたかった。
温暖化によってヒマラヤの氷河が溶け、その急激な融解によって氷河湖が決壊、洪水を引き起こしているのだが、洞爺湖サミットでその解決に向けて一歩でもアクションを起こしたかった。昨年の「第1回アジア・太平洋水サミット」で主催者であるNPO法人日本水フォーラムに「氷河湖の決壊による水災害をセッションに含めて頂きたい」とお願いし、また同水サミットの運営委員を務め、ヒマラヤ流域国を訪れながら、ネパールのコイララ首相、ブータンのロンポ・キンザン・ドルジ首相、インドのサイフディン・ソズ水資源大臣、バングラデシュのモティウリ・ラフマン水資源大臣に水サミットの参加を直接呼びかけた。各国に飛び回るのはなかなかハードであったが、その甲斐もあってか「第1回アジア・太平洋水サミット」でヒマラヤの氷河融解による水害の実態を世界に訴える事ができた。
ネパール コイララ首相と
ブータン ロンポ・キンザン・ドルジ首相
インド ソズ水資源大臣と
バングラデシュ ホフマン水資源担当大臣(右から2人目)と会談
しかし私の数少ない限られた経験から理解したのは、一度のサミットで全てが解決するものではないということです。環境問題だけではなく山積みされた多くの案件があり、それをたかだか数日間のサミットで全てに具体的な解決策まで打ち出すのは不可能である。そもそもサミットというものは大きな流れ、方向性を示すものだろう。肝心なのはサミット後である。
水サミット後に氷河湖対策に対してなんら具体案が出されなかった。落ち込んでいた私に外交官であった父は「ケン、たかだか一回のサミットで実現するわけがないだろう。温暖化の問題は国内のごみ拾いよりも遥かに複雑だ。なにしろ越境するわけでね、世界中を巻き込まなければならない。特に温室効果ガス削減に対しアメリカ、中国、インドが真っ向から反対するしね。しかしだからと言ってこれら主要排出国を抜きに進めてもまったく意味を持たないしね。焦る気持ちは分かるが1つ1つの積み重ねだ。次は洞爺湖サミットがあるじゃないか。まあ~シェルパの友達の為にも諦めないことだね」とっ、父の言葉は重かった。
第1回アジア・太平洋水サミットの模様
それから洞爺湖サミットに向けてまず鴨下環境大臣を訪ねヒマラヤの氷河の融解についてレクチャーさせて頂いた。鴨下大臣は温暖化によって海面上昇の被害に苦しむ南太平洋のツバル諸島から帰国されたばかりで現場感覚でお話ができるだろうと、私なりに期待していた。何故なら現場に行かなければ見えてこない部分があまりにも多いのが環境問題であり、そして現場を知ってしまった人は背負わなければならなくなる。
鴨下大臣に「ツバル同様にヒマラヤも温暖化の影響が深刻です。この氷河湖(イムジャ氷河湖)が決壊すればおそらく数万人の人が被害を受けるでしょう。そしてバングラデシュでもヒマラヤの氷河が溶けだした水が洪水を引き起こしています。そして大臣が行かれたツバルですが、海面上昇の原因の1つに大陸の氷河が溶けだし海に流れ込んでいることが挙げられています。つまりヒマラヤとツバルは繋がっているのです。洞爺湖サミットに向けて氷河湖対策を打ち出したい」と率直にお話したら鴨下大臣は「深刻ですか。時間がないんですね」とお尋ねになられたので「ハイ、深刻です。いつ決壊するか分からない段階です。決壊してからでは遅い。人が死ぬ前にアクションを起こしたい」とお伝えしたら「よく分かりました。すぐに動きましょう。野口さん、一緒に官邸に行きましょう!そして野口さんが直接、総理に訴えてください。その方が総理に伝わりますよ」とその半月後に鴨下環境大臣と官邸に向かった。
官邸に向かう際中の車内で福田総理とどのようなやり取りになるかイメージトレーニングを行ったが、どうにもしっくりこない。あのテレビで拝見する福田総理のあのひょーひょーとした、またどことなく他人事のようなお話のされ方に、果たして言葉のキャッチボールが成立するのか、また10分間といった限られた時間内でちゃんと伝えることが出来るのか不安だらけだった。
鴨下環境大臣と
福田総理と
福田総理とお会いした瞬間に「あれ、野口さんお若いの?」と総理。私は34歳だからもう若くもないし、かといってそれほど老いているわけでもない。したがって「34になります。微妙に若いかもしれません」とお答したら「あっ 微妙ね、そうね、微妙ねぇ~、微妙に若いね そうだねぇ~」と私の「微妙」という言葉を気に入ったようだった。このやりとりで緊張していたのがアホらしくなり一気にリラックスできた。
それからヒマラヤの氷河のレクチャーが始まるのだが総理は「ヒマラヤも大変なんだねぇ~温暖化の影響だねぇ~」と「ねぇ~」を連発。正直、伝わっているのかまったく手ごたえを感じなかった。しかし、ふと総理の眼鏡の中の目を見たらキィと鋭い目をされていた。それでいながら言葉では「そうなんだねぇ~」となる。あの眼光から見えてくる福田総理と「なんとかなんだねぇ~」と人ごとのように話をされる言葉とのギャップ。私はあの短い時間で福田総理のもう1つの顔を眼鏡の奥から見つけた。そして確かに手ごたえを感じ取っていた。予定時間の10分を越え秘書官が「総理、時間です」と合図をおくっても「いま大切な話をしています」とピシャリ。予定時間より大幅にオーバーし約30分間もの話し合いが行われた。
その直後、外務省が氷河湖への調査団派遣を決定。6月にイムジャ氷河湖を含め複数の氷河の調査を行った。つい先日、鴨下大臣と再会したら「総理が動いたでしょう。あの官邸での出来事で動いんですよ」と話してくださった。確かに伝わっていたのだ。私が見つけたもう1つの顔こそがあの方の姿なのだろうと、今まで多くの方にお会いしてきたが福田総理は初めてのタイプであった。これだから人は面白い。
(もちろん福田首相の全ての取り組みを評価しているわけではない。特に中国によるチベット問題への日本政府の対応には理解していない。しかし全ての思想が全て一致する人など果たしているのだろうか。「気候変動への取り組み」と「チベット問題」は別件であり、チベット問題に対してはこれからも明確に意見させて頂く)
洞爺湖サミットも無事に閉幕したが、先日、報じられたのが世界で最も有名なサミット研究機関であるカナダ・トロント大「G8研究グループ」が出した洞爺湖サミットの評価。洞爺湖サミットの評価は100点満点中、78点に当たる「B+」であり、これは2000年の沖縄サミットよりも高いだけではなくサミット33年間の歴史の中でも高得点のひとつだという。福田総理の議長としての采配については「サミットの成功をブッシュ米大統領から引き出すことに賭けた。ギャンブルだったが、うまくいった。真の指導者だ」と「A」評定をつけた。
一方で洞爺湖サミットをまったく評価しないといった民主党などの野党(彼らはいずれにせよ批判するのが仕事)やNGOからの意見があるのも事実。サミット前日に札幌市内でNGOなど約2500人がサミットに反対する団体による大規模行進「ピースウォーク」が開催された。私には理解出来ないのが「ストップ温暖化」といった看板を掲げながら何故にサミット開催を潰そうとするのか。過去のサミットの結果が不甲斐ないと感じるのならばサミットそのものを潰すのではなく「ちゃんとやれ!」といった言葉であり厳しい監視ではないだろうか。話し合いの場が無くなればそれこそもっともほっとするのが温室効果ガス削減に非協力的な主要排出国ではないか(もちろん温室効果ガス削減のみに限定すれば)。サミットの場で日本は欧州と一緒になって、アメリカなど(中国・インド)の削減目標に非協力的な主要排出国に対して圧力をかけなければならない。アメリカとて政権が変われば環境政策も大きく方向転回する可能性がある。アメリカの世論で環境問題に対する対応からアメリカが世界から取り残されている事に対して不満が多いのも事実。このサミットはポストブッシュ,そしてアメリカの有権者(次期大統領選を見据えた)に対するメッセージでもあるのだ。話し合いを諦めてはならない。
特に解せないのがロイター通信の日本人カメラマン。機動隊ともみ合いになり公務執行妨害で逮捕されたとのこと。ゴロツキならともかく報道側にいる人間が一体何をやっているのか。客観的に物事を伝えるのが報道であろうにデモ隊に参加して逮捕されるとは愚かでしかない。
昨年のサミットで日本は50年までに温室効果ガスを世界全体で半減させると提案し、今回のサミットでは日本や欧州は「検討」から「合意」に引き上げようとしたがまたしても足を引っ張ったのがアメリカ。アメリカは「中国、インドなどの主要排出国も含めた合意が必要だ」とハードルを高くしようとしたが、最終的には2050年までに温室効果ガス排出量を半減する目標について「世界全体の目標として共有し採択を求める」ことを明記し2020~30年ごろの中期目標について米国を含むG8各国が国別総量目標を設けることを初めて打ち出した。アメリカは、排出量の削減目標を国ごとに決める事に消極的だったが、そのアメリカを引き込んだことは1つの前進であったのだろう。
そして次に意義深いのが「すべての主要排出国による約束または行動の強化が気候変動のため不可欠である」と中国やインドなどの新興国にも削減に向けた取り組みを迫ったことでしょう。
冒頭に述べたようにサミットは大きな流れ、方向性を決めるもので、肝心なのはこれからの「つめ」だろう。もちろん、このサミットにおいても多くの課題、宿題が出されただろう。それらを次にどう繋げるのか。温暖化対策ならば昨年12月のバリ会議(気候変動枠組み条約の締約国会議 COP13)に引き続き今年の12月はポーランドでCOP14が開催される。COP14までに洞爺湖サミットで話し合われた事に対する「つめ」をしっかりやって頂きたい。反対するだけでは一歩も前進できないのだ。
再びヒマラヤの氷河湖に調査団が派遣されるだろう。調査のための調査ではなく、その調査から確かなアクションが生まれるまで私は眼を光らせ続けたい。
2008年7月13日 野口健
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