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戦争 , 遺骨調査・収集

遺骨収集、新たな環(わ)

戦争 , 遺骨調査・収集

2009/11/15

遺骨収集、新たな環(わ)

 11月12日、私たち空援隊は厚生労働省にて記者会見を行った。鳩山首相に遺骨収集に対し国の対応をただすため公開質問状、質問主意書を提出し、鳩山首相から答弁書を頂いた上での会見でした。私は何度も首相からの回答を読み直しました。一見、サラリと書いているかのような印象がありますが、あの文章は質問に答えているようでいて答えていないようでいて、そしてなんとなく答えている。簡単に思えるかもしれないが、あの一切の感情を排除した文章を書くのは意外と難しい。政治家の言葉には自身の主張が必ず反映されるもの。私なりにあの独特の言い回し、論理展開、どれをとってもあの文章は役人によって作成されたものだろうと確信した。そして後に何方によって書かれたものかも私たちは理解することになった。「脱官僚」を最大のテーマとした民主党政権。しかし、首相に出された公開質問状は秘書でも首相秘書官でもなく官僚によって答弁書は作成。私は鳩山首相によるお言葉を期待していただけに残念。

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厚生労働省にて記者会見

 そして「今後とも国の責務として可能な限り早期に収集できるように努めてまいりたい」と書かれてありましたが、そもそもその国がしっかりとその責務を果たしてこなかったからこそ、未だに多くのご遺骨がジャングルに野ざらしにされたままなのです。あの答弁書から今現在の鳩山内閣のご遺骨に対する姿勢というものをそれなりに理解することが出来ました。

厚生労働省にて記者会見

厚生労働省にて記者会見

 先日、麻生太郎前首相と偶然にも?お寿司屋さんでご一緒させて頂いた事はこのブログでも紹介させて頂きましたが、あの三日後、驚いた事に麻生さんから私宛にお手紙が届きました。便せん3枚にびっしりとご遺骨に関しての麻生さんの思いが寄せられていました。私には麻生さんのお気持ちが充分に伝わってきました。麻生さんのお手紙と鳩山さんからの答弁書は体温が違った。
 
同じ紙っぺらにも書き手の思いによって体温があるものだとしみじみと感じさせてくれた。私たち現場の人間はこの体温によってどれだけ救われることか。何も「全てを国にやってくれ!」と考えているわけでもない。ただ一緒になって取り組み、時に一緒に悩んでほしいと思いますが、これは我がままなことなのでしょうか。

 もし仮に鳩山首相と直にお話しさせて頂く機会があれば、ひょっとすればもっと伝わるのかもしれない。私なりに伝えるトライを諦めないでいたい。

 この日、天皇陛下即位20年を祝う記念式典が開催されましたが、これに先立ち、記者会見で陛下は日本の将来への心配を問われた際に「私はむしろ心配なのは、次第に過去の歴史が忘れられていくのではないかということです」とお話しされ第二次世界大戦にも触れられた後、「過去の歴史的事実を十分に知って、未来に備えることが大切と思います」と述べられました。

天皇陛下即位20年・国民祭典に主席(右から6番目)

天皇陛下即位20年・国民祭典に主席(右から6番目)

 私たちも同じ気持ちで遺骨収集に取り組んでいます。遺骨収集を始めてから「お前は戦争を美化するのか」などといった声が届いた事もありましたが、あのレイテ島の洞窟の中の世界をこの目にしてしまえば誰が戦争を美化するものか。洞窟一面に散乱する遺骨の山。残酷以外の何物でもありやしない。あの世界を自身の目で見て初めて戦争の残酷さを全身でリアルに感じる。我々は戦争を知らない世代ですが、私は私なりに遺骨収集を通して戦争を知ったわけです。

 記者会見の翌日、新たな出会いがありました。平沼赳夫さんですが、ご遺骨収集に関してご相談に上がりました。初めてお会いしましたが、約30分、私の話を真剣に聞いてくださりました。そして「空援隊の顧問は喜んで引き受けさせてください。私の仲間にも声をかけます。本来ならば国がやらなければならないこと。心から感謝しています。私にできる事があればなんでもします。一緒にやりましょう。今日は嬉しかったんです。私のところにはトンネルを作ってくれだとか、橋を作ってくれといった話をしに来る人は多いけれどあなたのように国のために来てくれるのはとても嬉しい」とそして驚いた帰り際、エレベーターまでわざわざ、私は平沼さんの温かさに涙が流れそうになった。凛としたサムライに出会えたこと、出会いの神様に感謝しました。

平沼赳夫さんとの出会い

平沼赳夫さんとの出会い

 そして自民党の政調会長の石破茂さんとも初めてじっくりと遺骨収集について、また国家論について意見交換致しました。石破さんも「今まで国がしっかりとやってこなかったのがいけないことです。あなたの「国のために人に対し冷たい国はいずれ滅びる」はその通りです。私にも考えがあります。これから一緒にやっていきましょう」と約30分間の話し合いでしたが、石破さんは極めて論理的であり、またそこには感情も含まれていました。

石破茂さんとの決意

石破茂さんとの決意

 この日、元環境大臣の鴨下一郎さん、元公明党代表の神崎武法さんとも意見交換させて頂き、空援隊の顧問になってくださることになりました。こうして空援隊にまた新たな仲間が加わりました。

 私はあの灼熱地獄のジャングルの中、多くのご遺骨に向かって「必ず日本にお帰しします。国に伝えて必ず皆さんをお迎えにあがります」と誓い、また約束しました。来週、空援隊は再びフィリピンに向かいます。今回、私は仕事の関係上、日本に留まらなければなりませんが、私たち一人一人、与えられた役割をしっかりと果たしていきたい。

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