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2010年春ヒマラヤ , ネパール

暴動と化すネパール

2010年春ヒマラヤ , ネパール

2010/05/04

暴動と化すネパール

毛沢東を支持するマオイスト。いわゆる共産ゲリラだが、このテロリスト集団は5月1日のメーディからネパール全土にストライキを宣言。特に首都であるカトマンズに全国から集まり、町中をデモ行進。勝手にデモをやる分には彼らの自由であり、表現の自由なのかもしれないが、
火を手に町をうろつくマオイスト
火を手に町をうろつくマオイスト
表現の自由の枠を大きく超えてしまっている。

彼らのストライキとは店を営業すれば焼き払うと言い、車が走れば襲撃するという。マオイストに襲撃されようが今のネパールは軍も警察も無力。軍も警察も国民を守れる状況にはなく、マオイストがネパール全土にストライキ(バンダ)と宣言してしまえば、襲撃されたくない国民はマオイストに怯えストライキに応じるしかない。

以前にも銀行を襲撃、また貧しい農村地帯では村人から食料などの搾取を繰り返してきたのだ。私のシェルパ達の何人もがこの被害にあっていた。シェルパの彼らは「寄付しろ!と言ってくるが断れば危害を加えられる。食料を差し出すほかなかった」と話していた。

そのマオイストが無期限ゼネストを宣言し、ネパールはマヒ状態。国家が国家として機能していないのだ。5月1~3日までは通常のストライキだと、そしてそれ以降ももし内閣が総辞職しなければ警察や軍の施設などを襲撃すると宣言するマオイスト。 どうであれ法治国家であるネパールにおいてマオイストにはそのような法的権限は当然のことながら持っているわけもなく、問題はネパール政府がこのテロリスト集団の要求を飲むのか、または突っぱねるのか。「テロリストとは交渉しない」、これが世界の鉄則であるようにも感じるのだが、さて、どうなるのでしょうか。
暴動と化したネパール
暴動と化したネパール
デモ隊のど真ん中
デモ隊のど真ん中
ヘロヘロになりながらバングラデシュからネパールに戻った我々は、まさにこのど真ん中。飛行場からどうやってカトマンズ市内のホテルに戻ればいいのか。もちろん、一台のタクシーもない。車は走れば襲撃されてしまうわけだから。

途方にくれていたら政府が外国人旅行者専用バスを手配するという。しかしそのバスがいつやってくるのか、そして整理券が発行されているわけではないので、来るバスに観光客が殺到する。飛行場関係者も軍も警察も交通整理を行わない。このような基礎的な対応も出来ず、無意味なパニック状態。

ストライキはある程度前からマオイストによって宣言されていたわけだから事前に準備できる事も多かっただろうにと、情けない。不甲斐ない国家の姿である。
まったく頼りない警察に国軍
まったく頼りない警察に国軍
あの時代の日本ですら226事件は鎮圧された。警察、軍が無力になると、こうしてテロリスト集団が好き勝手に暴れ出す。法治国家としての国家の姿勢を示すのならばこのような不法行為は決して許してはならないと感じながら、不甲斐ないネパールの警察、国軍ではもはやマオイストを鎮圧するだけの力はないのだろう。つまり国家としての終焉を意味している。中にはネパール人自身で国家運営できない事に「いっそうのことインドの植民地になったほうがましだ!」といった声も聞こえてくるが、理解できないわけではない。

パニックになっている飛行場でブツブツと、「テロリストのやりたい放題のこの国の国家としてのプライドはどこにあるのか!」などと呟いていたが・・・どうしようもない。

仮に日本で右翼団体でも左翼団体でもいいのだが、彼らが「鳩山政権が総辞職しなければ町中を襲撃する」と宣言し首相がその条件を飲むまでは「日本全国、ストライキ、車が走れば襲撃する。営業活動も許さない」と勝手に宣言し、その通りになっている状況を想像してみれば、いかにネパールの状況が異常であるという事がわかる。日本とネパールを比較してみたところでまったくもって意味ありませんが、ただ、ネパール人がネパールをどんどん悪くしていくのを見ていて極めて腹正しい。
マオの旗を背にする青年
マオの旗を背にする青年

 以前、マオイストなる人物が複数やってきて(地方をトレッキングしているとよく遭遇する)、たまたま私が持っていた歴史の本に毛沢東の顔写真があったので「これ誰か分かる?」と聞いてみたら、なんのことはない「だれ?」と答えが返ってきた。彼らの多くは毛沢東の顔も知らないのである。彼らに共通しているのはインテリジェンスの欠片も感じないということ。

戦後、安保反対活動などの学生運動があったが、正しいかどうかは別にして彼らは自分たちがインテリであると自負していただろう。左翼活動を行う人たちには多く見られる傾向だが、この国の共産ゲリラにはそのインテリさを微塵も感じさせない。

マオイストの中でどれだけ共産主義なり毛沢東研究をしているのだろうか?毛沢東の顔も知らずに毛沢東主義者と名乗っているマオイストが多いのは間違いない。商店街を襲撃し略奪行為も過去にはあったが、あれでは単なる百姓一揆ではないか。
途方に暮れる観光客 飛行場にて
途方に暮れる観光客 飛行場にて

 なんとか飛行場で政府のバスに乗り込めたが、市内中心部で下されそれから荷物をガラガラと引きずりながらホテルまで裏道を歩くしかなかった。バングラディシュの飛行機は行きも帰りも永遠と遅れ、やっとの思いでカトマンズに着いたら、今度はストライキ。そんな状況の中、政府のバスで市内に向かう途中、目の前に群衆が押し寄せ、バスの一番前の席で撮影していた平賀カメラマンもさぞかし恐怖を感じたであろうが、我々のバスの前からデモ隊が迫ってきて囲まれた。ただバスの中に乗っているのが外国人と確認し「よし!行ってもよい」と合図し彼らは去って行ったが、先ほども指摘したように彼らにそのような法的権限はないわけで、何とも不愉快で腹正しい。
このバスだけが襲撃されないと言われている
このバスだけが襲撃されないと言われている我先にバスに乗り込むとする外国人
我先にバスに乗り込むとする外国人
なんとかバスに乗り込む
なんとかバスに乗り込む
我々のバスに向かってくるデモ隊
我々のバスに向かってくるデモ隊

無事にホテルにたどり着いた時には中庭でバタンキュー。カトマンズで一泊したのち、今度は帰国のために再び飛行場に向かわなければならない。果たして無事に飛行場までたどり着けるのだろうか。
バスから降ろされホテルまで裏道を歩く
バスから降ろされホテルまで裏道を歩く

 心配なのは5月4日以降。マオイストは内閣が総辞職しなければ各地で襲撃を始めると宣言しているとのこと。場合によってネパールは再び内戦状態となる。こんな事を繰り返して果たして得るメリットはあるのだろうか。観光客は減少し、国家機能がさらにマヒすれば物価も高騰しさらに失業率が高くなるだろう。

私事ですが、バングラデシュのハシャリ村であの髭の立派なドゥラル・シェイクさんの家に招待された時のこと。ジュースを出されましたが、リスクがないわけがない。ミネラルウォータのわけもなく、沸かしているわけもなく、しかし、せっかくの好意であり、一口も付けないわけにもいかないので、ヤバいと分かりつつ一口つけたら、次の日の早朝からお腹が全壊全損。

まるでハーレーダビッドソンのオートバイのごとく、「ドドドドー」とトイレで騒音をまき散らすのであった。鼓動館に修理の依頼をしようかと思ったほど・・・。

おそるべしハシャリの水。洪水を繰り返しているバングラデシュでは汚染された汚水が井戸に混ざり世界で最も下痢が深刻な国。以前、聞いた話では乳幼児は世界で最も下痢が多いとか。そんな情報は耳に入っていたが、断れずついつい飲んでしまった。おかげで酷く体力を消耗してしまった。


そんな事も重なり、この暴動、いやぁ~実に参りました。

これからカトマンズの飛行場に向かいますが、ホテルの表はデモ隊のあげる奇声とパトカーのサイレン音。火がついた棒を振り回すマオイスト。やれやれです。では、これで帰国します。ナマステ!

2010年5月3日 カトマンズにて 野口健

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