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2010年アフリカ , アフリカ , 自然保全

「ダーウィンの悪夢」の舞台・ビクトリア湖へ

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2010/09/10

「ダーウィンの悪夢」の舞台・ビクトリア湖へ

早朝、出港する
早朝、ナイルパーチ漁の為に出港


ビクトリア湖は海のように広い

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4日ケニア山から下山し5日はヴィクトリア湖湖畔の町カセセへ移動。再び悪路をガタガタと揺られ続ける事7時間。ヴィクトリア湖はケニア、ウガンダ、タンザニアに囲まれた巨大な湖。ナイル川の主流の1つである白ナイルの源流でもあり、

100万年の歴史を持つ古代湖だとか。資料によれば多くの固有種が進化し生息する「ダーウィンの箱庭」として有名であったが、30~50年前(人によって言う事が異なる)にナイルパーチ(スズキ亜目アカメ科)が食用のために放流され、これまでに数100種類の固有種の大半が絶滅したとも言われている。

船上撮影をする平賀カメラマン
平賀カメラマンも漁船に乗り込みビデオ撮影

ドキュメンタリー映画の「ダーウィンの悪夢」にも取り上げられ世界から注目されることになったヴィクトリア湖。私もこの「ダーウィンの悪夢」を見ましたが、言葉に安易には言葉に表せないほどの衝撃を受けました。ドキュメンタリーで描かれている世界の全てが正しいかは分かりません。仮に最初からある程度、方向性など意図して作成されたものだとしても、その大半は真実を伝えているんだろうと、あの生々しい世界が物語っていた。

 よく見たらカバが・・・
よく見たらカバが・・・

二日間の滞在などでその真相に迫れるはずもなく、ただ実際にヴィクトリア湖に訪れ漁師やガイドと一緒に漁に参加し話を聞けば何かを感じる事が出来るだろうと訪れてみた。詳しくは帰国後に環境雑誌「ソトコト」にて掲載しますが、最大で全長が2メートルを超え200キロ以上にもなる肉食の外来種ナイルパーチを、外敵から隔離され守られてきた固有種の宝庫である湖に放流すればどのような結末が待ち受けているのか素人でも判断ができるだろう。日本でもブラックバスが同じような問題を抱えている。

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このヴィクトリア湖とナイルパーチの問題は生態系崩壊のみならずヴィクトリア湖周辺の人間社会にも大きな影響を与えてしまった所が悲劇なのであろう。ナイルパーチは高級白身魚として欧州や日本にも多く輸入され続けている。湖畔の町にはナイルパーチの加工工場が並びヴィクトリア湖周辺では急激に人口増加。そして貧富の差が拡大し物価は高騰。強盗、殺人が増え治安は急速に悪化。ワニに襲われる漁師。生活苦から売春が蔓延しエイズが広がる。

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実際に私たちが取材した漁村も物価高騰に漁師相手に売春が蔓延り、コンドームを使う習慣のない彼らの社会にはエイズが瞬く間に広がったとのこと。魚を求めて売春に応じる女性も多いのだそうだ。

 18キロのナイルパーチ
18キロのナイルパーチ

「ダーウィンの悪夢」に描かれていたごくほんの一部ですが、二日間の滞在で少しだけでも見聞きする事ができた。

 

漁師たちのインタビューで印象的であったのが「ナイルパーチによって他の魚が捕れなくなったのは知っている。しかし、私たちにはもうナイルパーチしかない。私たちの生活はもう元に戻れない。今はそのナイルパーチも激減している。乱獲だろう。また水質汚染の影響もあるでしょう。いつまでナイルパーチを獲れるのか分からないけれど、獲り続けるしか生きていけないのです」

 水揚げされた小魚を運ぶ
水揚げされた小魚を運ぶ女性たち

ナイルパーチ問題はアフリカ最大の汚点とも言われているが、しかし、ナイルパーチ漁を中心とした人間社会が既に構築されており、今さら時計の針は戻せないということなのだろう。「取り返しがつかない」というのはまさにこの事。そしてそのナイルパーチも日本に毎年大量に輸入され続けている。つまり私たちも無関係ではなく知らず知らずの内に関わっている事を忘れてはならない。

 小さめのナイルパーチ
小さめのナイルパーチ

ドキュメンタリー映画「ダーウィンの悪夢」をご覧になっていない方にはぜひご覧頂きたい。

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