サリブン峰BC入りし、今日はハイキャンプ周辺まで偵察&順応のために標高を上げようかと思いましたが、雪が降ったり止んだり。早朝は青空を見せてくれていたのですが。僕の勝手なイメージではムスタンは「この時期のチベットのように乾いている」というものでしたが、午後になる前に毎日のように雨か雪。マナスル峰ほどではないですが、それにしてもよく降る。というか安定してくれない。なにしろムスタン地域の情報が極めて限られているため、どうしてもイメージが先行してしまう。
そこで山岳気象予報士のエキスパートの猪熊隆之さんに調べて頂いたところ「ローマンタンなどムスタン地域はアンナプルナ山群が障壁となり乾燥した空気が流れるが、サリブン峰周辺はアンナプルナの北東にあたり南の谷が開いているためにタライ地方(インドの近く)から湿った大気が流れ、まとまった雪を降らせているのではないか」との分析結果を頂きました。また今後の気象予報についても。
確かにこの地域に集中して雪が降っているような印象があり、猪熊氏の分析に「なるほど」と納得。エベレストを含め様々な登山隊を気象予報の観点からサポートされてきた猪熊さんだけにとても説得力がある。感謝です。しばらくは「天候が安定しない」との事で、予定では明日からハイキャンプ入りでしたが、しばし様子を見ながら、ということになりました。明日は天候次第ですが、ハイキャンプ手前までは登ってみたい。
ムスタン入りしてからずっと感じているのが、この時期にしては風が幾分か冷たい。そして今夜からはさらにグッと冷え込み感覚的には2月頃のような。一年ぶりのヒマラヤ遠征なので、まだ体が寒さに慣れていないのかもしれませんが、今回は特に寒く感じる。今朝、日の出直後に視界が開けていたので自分のテントと後方にある山を入れて撮影していたら指の感覚がなくなるほどに冷えた。サリブン峰は昨年10月に、滑落により3名が遭難死しているだけに慎重に攻めていこうと思います。
今日は一日中、テントの中で「ボケー」と過ごした。今のところ、高所順応も順調で頭痛なし。食欲もあり平賀カメラマンと「帰国したらまずは寿司だね」と。キャラバン開始して3週間経つと寿司が恋しくなってくるシーズン。あと、お風呂。体を思いっきりお湯に浸けたい。まだ3週間なのに情けないですね。日本はもう暖かいのかな。では、お休みなさい。
2012年4月28日 サリブン峰BCにて 野口健