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産経新聞連載「奇想天外だった石原慎太郎さん」

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2022/02/17

産経新聞連載「奇想天外だった石原慎太郎さん」

2月17日の産経新聞の連載コラムです。

石原さんとの奇想天外な関係について思い出の一部を書いた。今、思い出しても、不思議な事ばかり。慎太郎さん、あれは本当に忘れていたのか、それともとぼけて、唖然としている僕の反応を楽しまれていたのか。ヘリの話も本気だったのか、ジョークだったのか?未だにわからない。

2022年2月17日掲載 産経新聞「直球&曲球」
『奇想天外だった石原慎太郎さん』

石原慎太郎さんとの奇想天外なエピソードは数え切れない。いきなり電話で「今どこにいる、大至急、都庁に来てくれないか!」と。とっさに「地方にいますので難しいです」。「だったらヘリをチャーターしてこい」。ジョークなのか、本気なのか。翌日、駆けつけると「平沼赳夫(元経産相)と作った党から出てくれないか。この国のために一緒にやろう」。出馬要請であった。石原さんのオーラに圧倒されながらも「NOと言える日本」のタイトルを思い出し、勇気を振り絞って断った。帰り際、「野暮(やぼ)な事(こと)を言っちまったな。この国のためにもエベレストで死なれたら困る」との言葉に目頭が熱くなった。

あるときは「君は日本の最高峰を清掃していると言っているが、やっていないじゃないか!」。会話が全くかみ合わない。「(かつての)日本の最高峰は新高山(にいたかやま)(台湾の玉山)じゃないか。直(す)ぐにでも台湾に行くことだ!」と石原さんの電話は一方的に切れた。意味が分からず、しばしポカーン。秘書官の方から「知事が(台湾の)李登輝総統との会談の中で『日本には山を清掃するスペシャリストがいるので派遣する』と思いつきで話してしまった。台湾に飛んでもらえませんか」と。それで本当に2回も台湾に行くことになるとは...。不思議なミッションを象徴したかのように玉山山頂は猛吹雪に見舞われた。

話はここで終わらない。台湾から帰国し、知事室に報告に上がったら「そうか、台湾に行っていたのか。ちなみに何をしに行っていたんだ?」と。心底驚いた。またあるときには、「都が尖閣(諸島)を買ったら貴方(あなた)には真っ先に上陸してもらいたい」と、これまた突然の連絡。いつしか、この「奇想天外」な関係に刺激を受けている自分がいた。

石原さんの訃報を聞き、ついにその時が来てしまったのか、と心に大きな穴が開いた。その人生はまさにあの玉山の嵐の如(ごと)く激しく駆け抜けたのだろうと。その日の空は玉山とは対照的にまるで台風一過のように穏やかだった。空を見上げながら「十二分にやり切った生涯だったのだろう」と感じていた。
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