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私の進む道

これまでを振り返って

私の進む道

2000/01/24

これまでを振り返って

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サガルマータ登頂後、「7大陸最高峰最年少制覇」と大々的に報道するマスコミにしばし戸惑いました。7大陸最高峰、また最年少といったあくまでも表面的な記録ばかりが一人歩きしてしまい、私が何を7大陸最高峰登頂から感じたかは、あまり関係なかったように感じます。勉強も出来ず目標もなくフラフラしていた私が、偶然にも植村直己さんの著書「青春を山に賭けて」と出会い、人生で初めて”7大陸に登ろう”という目標を持ちました。そもそもなんでもよかったんです。植村さんが5大陸なら私は7大陸に登ろうと単純に考えただけです。登山経験がないまま7大陸の挑戦が始まり、当然のごとく失敗も繰り返しました。97年のチョモランマ(エベレスト)敗北もなるべくしてなった結果です。帰国後、「力もないのに金だけ集めて」とご批判も頂きました。悔しい思いもしましたが、事実でしたから反論すら出来ませんでした。

 98年の2度目の失敗の際はべースキャンプで待ち構える報道陣に「登頂はなりませんでしたが、でも今回は楽しかったです。だからそれでいいんです」と精一杯の強がりを言いました。もちろん、全てが本音ではありません。ただ、失敗を繰り返しながらも、どうすれば登れるのかと頭も使いましたし、自分なりに冒険に対する哲学が出来ました。苦しい時期でもありましたが、ただ最も本気で物事を受け止め、前向きに試行錯誤できた時期でもありました。生き生きしている自分がそこにはありました。これこそが私にとっての7大陸最高峰でありサガルマータ登頂であったと思います。

 昨年10月、自伝「落ちこぼれてエベレスト」(集英社インターナショナル)を出しましたが、その中で高校生時代のエピソードを書きました。立教英国学院という英国にある全寮制の学校ですが、ここでの英国風の教育も私の人生に大きな影響を与えました。勉強もしないでフラフラしている私に、学校側は徹底的に厳しく接しました。高校入学の際には仮進級処分を言い渡され、放課後のクラブ活動の禁止、文化祭等の学内活動の制限、生徒会の立候補等の選挙権はく奪といった学内での行事には絶えず参加できない方針がとられました。また、優等生の彼女との交際には「兵隊がお姫様を好きになるようなものだ」と猛反対されました。私も彼女も謹慎処分を命じられた事もありました。学期期間中は1度たりとも自由に学外への外出は認められないだけに、学内の世界が全てです。学校を恨む事もありましたが、ただ、落ちこぼれであった私相手に先生も本気で接してくださったのも事実です。逃げ場を与えず、厳しく接して頂いたからこそ、その中で自分自身を見つめ、自らが自身の歩むべき方向性を見つけだせたと思います。学校が私に対して過保護に接していたならば、恐らく弱い自分へと逃げていたに違いないでしょう。
 

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