シェルパ基金 , ヒマラヤ , 富士山 , 私の進む道

2001/03/01

私の進む道2001

今年も私にとって環境Yearであります。昨年に続き、第二次チョモンマ清掃登山隊を結成し、3月中旬から5月下旬にかけ清掃活動を行います。石原東京都知事のご協力をいただき、2000年9月28日~10月12日に東京都庁にてチョモランマから回収したゴミの一部を展示しました。ゴミにまみれたチョモランマの姿に、見学にいらした多くの方々のため息が聞こえてきました。

 そして感想の大半は「チョモランマにゴミがあるなんて想像もしていなかった。」「日本隊のゴミにショックを受けた」「今まで色々なメディアを通して美しいチョモランマを見てきましたが、あれは一体なんだったの」と美しい姿のみを伝えてきたマスコミ批判、また山岳関係者なる方々から「山岳会の者だが、日本隊のゴミばかり強調してけしからん」「君はこれでいくら儲けたんだ」と、名前も名乗らずに「山岳会の者」という自己紹介に正直閉口いたしました。本当に多種多様な反響があるものです。

 しかし、日本人の現環への意識の度合いに対する問題提起としての展示会でありましたから、多種多様の反響は私が目指した展開でした。地球のシンボルでもあるチョモランマの汚染は、今の我々の社会の縮図です。チョモランマから今年もメッセージを発信したいと思います。

 第二次チョモランマ清掃登山活動であるが、咋年の総勢26名から40人へと清掃隊も規模拡大である。また、日本隊のみならず、アジア諸国の登山家を中心とした世界初の国際チョモランマ清掃登山隊として組織する。自然環境への取り組みは、なにも日本のみの問題ではない。地球は大量生産、大量消費、大量廃棄によって維持されてきた社会がもたらす負荷に耐えられなくなってきている。世界最高峰チョモランマとて例外ではなく、回収されたゴミは、残念ながら日本・韓国・中国といったアジア諸国のものが多く、チョモランマにゴミを捨てる登山隊の出身国に偏りが見えてくる。

 例えば日本隊のゴミもあるが、私は単にその日本隊の隊員のみの責任とは思わない。一つは時代的背景もある。環境問題が取り上げられる以前のゴミに関しては、登山隊のモラルというよりも、日本全体の自然環境に対するマインドの低さである。山に限らずに日本の町を見てみれば分かる。町を歩く人々がいとも簡単にタバコをポイ捨てする。ジュースの空き缶も同様に転がっている。以前お役所に用事があり、霞が関に出かけたが、官僚方も当たり前のごとくタバコをポイポイ捨てる。霞が関から官庁の入り口までの歩道を見れば情けなくなる。

 以前、富士山を世界遺産にしようとする活動があり、その調査委員会が来日し冨士山を訪れたが、その際、「こんなゴミに汚された山を世界遺産にはとても選ぶことなど出来ない」と帰ってしまった。世界的に有名な登山家メスナーも富士山の事を「世界で最も汚い山」と表現したという。私も世界中の山に登ったが、山頂に自動販売機があったのは富士山のみ。山とは水筒をもって歩くものだ。自然を求めて山に登るはずが、その自然の中にも都会でのシステムを持ち込んでしまった。利便性重視という事か?

 それにしても、何故、日本人は日本のシンボルでもある富士山をゴミの山にしてしまったのか。登山者のモラルのなさは言うまでもないが、そこで営業している山小屋も平気で生ゴミや糞尿まで垂れ流す。

 国立公園内であるのに関わらず、それらを取り締まれない地方自治体と行政機関。利益に関わる部分には群がるが、富士山への環境保護を訴えればその群れはパッと一目散に散っていく。アメリカの国立公園は国や州が責任をもって管理している。大半の国立公園に入るためには10~15ドルの入園料の支払い義務がある。北米大陸最高峰マッキンリーでは、不当にゴミを捨てれば罰則が待っている。集められた入園料金はその公園の環境調査費やレンジャー等の人権費、ゴミ回収費等に使われる。国立公園を訪れる人々が各自負担する制度がしっかりと明白に組まれており国民の大半が納得している。したがって富士山のように国立公園内がゴミにまみれる事などない。実際に私が登ったマッキンリーなど富士山より遥かに厳しい自然環境にありながら、ゴミなどほとんど見掛けない。

 その反面、日本人は富士山からの恩恵を受けつつも、恩返しをしようともしない。富士山を取り巻く制度はあまりにもふがいない。信仰の山、富士山がゴミ溜めである。そして、被害は富士山に止まらず、中高年を中心とした「日本百名山ブーム」の影響で百名山も自然破壊が進行中であるという。

 作家の深田久弥の「日本百名山」がブームに火をつけ、NHKが番組化し、また今年1月から朝日新聞までが「週刊日本百名山」を創刊。その中で2月1号の週刊文春では「日本百名山」の自然破壊を告発している。その記事の中で「傷だらけの百名山」(リベルタ出版刊)の著者・加藤久晴教授が「乱開発に加えて、ブームによって悪質な登山者や業者が急増したため、百名山はもはや満身創湊の状態です」と訴えている。「富士山ではブームに乗じて悪質な山小屋が増えている」との指摘もある。「登山者の来ない台風シーズンにトイレの糞尿をバキュームカーで運び出し、頂上付近から谷へ向けて廃棄している経営者もいます」。その他に、高山植物の盗掘、木を切りつくした山小屋、団体で山肌を踏み荒らした登山者、等々と記事を読むと頭が痛くなる。

 加藤教授は百名山ブームをあおるメディアの責任を指摘している。あおるだけあおって後はしらんぷり、なんらフォローがなされていないという事。これもブームに乗っかり儲けようと、利権に食いついた悲しい結末なのだろうか。

 実は昨年の夏、某出版社に「日本百名山の環境調査」で連載を組みたいとお願いし、今年からその調査が始まろうとしていた矢先にこの週刊文春の記事を読み、やほり予感が的中したかとがく然とした。

 日本に来る多くの外国人が世界的に有名な富士山に登るが、彼らの目にはこの異常事態がどのように映るんだろうか。

 昨年、チョモランマで回収されたゴミの一部を東京都庁内にて展示を行った。その展示会を英字新聞のジャパンタイムズ紙が大きく掲載した。記事の中には過去の日本隊のゴミがチョモランマに多く、それに驚いてチョモランマ清掃登山を思い付いた話しなども書いてあったが、その翌週にその記事を読んだ読者からの手紙が同紙で紹介された。欧米人のその彼は「日本のゴミがエベレストにあった事に野口健氏が驚いた事に驚いた。野口健氏は海外の山ばかりに登っているから日本の山の汚さを知らないんだろう」と指摘した。つまり、「自分たちの山ですら汚す国民は他国の山も平気で汚す」と言いたかったのだろう。このメッセージはズシリと重く響く。

 お隣りの韓国の山も同様に汚されているという。チョモランマで我々が清掃している真横で中国登山隊員がポイポイとゴミを捨てていた。彼らにも我々のチョモランマ清掃活動などまったく理解できなかったに違いない。

 登山隊員のモラルという狭い枠で区切るのでなく、その国家の国民性がたまたまチョモランマで形として表れ目立っているにすぎない。つまり、チョモランマにゴミを捨てる傾向のある登山隊の国にいけば、その国も同様に汚されている。

 私のチョモランマ清掃はチョモランマを清掃すると同時に日本の社会、それを広げればアジア諸国全体への環境に対する意識改革をも含め、人が自ら負担しながら環境を守る必要性を示していきたい。国際隊はその絶好のチャンスだろう。その価値ある企画を自らの手で立ち上げられた事の幸福さ、そして隊長としての責任の重さをひしひしと感じながら、私は3月中旬再ぴチョモランマに向かう。日本・韓国・中国・ネパール・グルジア等のアジア諸国の登山家が団結し、昨年以上の成果をあげ、また無事にその任務を終了できるよう誠心誠意取り組みたい。

 そして今年は私のもう1つの夢でもあるシェルパ基金がスタートします。シェルパ基金設立、第二次チョモランマ清掃登山隊、百名山の環境調査やアメリカの国立公園の管理システム調査(いずれも調査報告も当ホームページ上にて公開)と、行うことが多々あります。目標に向かってどこまで突き進めるか未知数でありますが、タブーとされていることへの挑戦が私の使命であると受け止め、例え火だるまになろうとも前へ前へと進みたいと思います。 これからもどうか応援よろしくお願い致します。

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2021/03/12 IWCの取材

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