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ヒマラヤ , 橋本龍太郎氏と

龍さん、ありがとう

ヒマラヤ , 橋本龍太郎氏と

2006/12/21

龍さん、ありがとう

7 月 1 日午後 3 時過ぎ、富士山で清掃中の私に訃報が届いた。橋本龍太郎氏が多臓器不全と敗血症性ショックのため死去された。龍さんと始めての出会いは 2000 年 6 月、エベレスト清掃活動を終えて帰国した直後にさかのぼる。実はエベレスト清掃登山に出かける直前に山岳会の先輩でもある龍さんから一枚のハガキを頂いていた。そこには「 1973 年にエベレストに行きましたが、その時は前年の隊の捨てたもので随分助かりました」と書かれてあった。エベレスト清掃登山を発表をした頃で、エベレストに日本語のゴミが多いと発言し、一部の山岳関係者からしかられていただけに「ゴミに助けられた」という龍さんの言葉の裏になにかあるなと思った。

  清掃登山に対してクギを刺してきたのだろうと、それならば売られた喧嘩なら受けて立とうとエベレストで橋本隊が捨てたボンベを回収し、帰国と同時に橋本事務所に持ち込んだ。「先生がエベレストに忘れたものを持ってきました」とボンベを差し出したら、裏に表示された製造年月日を確認し、真っ赤な顔をされながら眉間にグッとしわを寄せにらんできたので、これは怒るぞと身構えたら、「これは確かに我が隊のゴミです。参りました」と深く頭を下げられた。それから積極的にマスコミに「私のゴミを野口君が拾ってきた」と話し、週刊誌などに「エベレストにゴミを捨てた元総理」とバッシング的な記事を書かれたが、それでも「このような問題は公にしたほうがいい。私が叩かれればこれからの日本隊はゴミを捨てにくくなる」と話していた。

 後で分かったのだが、橋本隊のメンバーが下山中にボンベを空にして遭難しかけた時、捨てられたボンベを発見しそれを吸いながら生還したとのこと。文字通りゴミに助けられたわけで私の勘違いであったが、何より龍さんの潔さに驚き感服した。

 それから龍さんとのお付き合いが始まった。テレビで見る龍さんは近寄りがたい雰囲気を放っていたが、私と話すときはいつも熱血漢で義理堅い方だった。そしていつも日本の将来を気にかけていた。政治屋が多い中で龍さんは根っからの政治家だった。いつしか龍さんを親のように感じ心の支えにしてきた。

 龍さんと一緒に過ごしてきた中で印象的な出来事がいくつもあった。ネパールでは龍さんが支援してきた小児科病院に同行したが、病院の中では周りに記者がいないことを確認すると、全身がチューブだらけになっている赤ちゃんを抱えながら目を真っ赤にし「助けなければいけない」とポツリと言っていたが、病院を出る時に記者に囲まれたら突然憮然とし記者を寄せ付けずに車に乗り込んだ。「なんでいつもそうなんですか」と本人に確認したら、赤「あくまでも個人で支援してきた病院だ」とピシャリ。その辺りの政治家ならば、赤ちゃんを抱っこしているところを写真にとらせ、いいことしているだろうとパフォーマンスするだろうが、彼はそういう行為をもっとも嫌った。

 2003 年の衆議院選挙での出来事。応援演説に駆けつけたが、地元の県議が「橋本先生は倉敷(選挙区)に貢献してくれる。まだまだ道路も作らなければならない。橋本先生が地元に仕事を持ってきてくれる。」と支持者相手に演説ぶっていたが、最後に張本人の龍さんがその県議の目の前で「私は必要で無いものは作りません」とピシャリと言い切ってしまった。会場には土建関係者だと一目見て分かる人たちが大勢いようと龍さんには関係なかった。そして長々と国際情勢の中で日本がどのように立ち向かっていくのか、おそらくその会場にいた人たちにはさほど興味がないような国家論、政策を訴えていた。正直、よくこれでこの人、勝ってきたなぁ~と不思議であり龍さんにいとも簡単に拒否され明らかにムッとしているその県議の顔がおかしかった。後に岡山県在沖の土建関係者が「龍太郎は地元の事を大切にしなかった。橋本ロードも橋本ブリッジもない。地元よりも福祉ほうが大切だったのだろう。地元じゃ婦人のほうが人気あったよ」と漏らしていた。不器用な人だったが僕はそんな龍さんが好きだった。

  政界を引退し自由の身になりこれから一緒に富士山の清掃活動など行おうと話し合っていた矢先の訃報。最後に龍さんにお会いしたのは 4 月上旬。別れ際に「これを持っていけ。」と龍さん愛用の木製のピッケルを手渡された。「俺はもう使うこともないだろう。後はお前に任せるよ」と初めて耳にする弱音に「頂くわけにはいきませんが、今度一緒に山に登るまではお預かりします」と持ち帰った。来年、私はこのピッケルで大好きな龍さんとともにエベレストの頂を目指す。

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