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地球温暖化 , 氷河湖・水環境

ツバルでマングローブを植樹する日本人

地球温暖化 , 氷河湖・水環境

2008/03/13

ツバルでマングローブを植樹する日本人

遠藤秀一さんが代表を務めるNPO法人オーバービューはコスモ石油エコカード基金の協力を得て昨年(2007年)からツバルのフナファラ島でマングローブの植樹を開始。

ツバルの国土面積は公式には26万平方キロメートル(バチカン・モナコ・ナウルに続き世界で4番目に小さい国)。だが、イエレミア首相によればすでに海面上昇により2万平方キロメートル失ってしまったとのこと。ツバルの平均海抜は1~2メートル。近年、海面は10年に約20センチのペースで上昇しているとも指摘されている(IPCCの4次報告書では21世紀末までに最大59センチメートル上昇すると推測されている・ツバル政府の報告によれば、ツバルでは年間平均5・7ミリの海面上昇)。このままのスピードで海面上昇が続けば、あと50年間で高波などの被害を加えればツバルの大部分が水没する可能性がある。
 
実際に5年ぶりにフナフティの北西15キロにある無人島・テプカ島に訪れてみたが、海岸が浸食され根元が波に流され根がむき出しになりそしてバタバタと倒れ、まるでヤシの木の墓場のように無残な光景に我々、取材班一同、みな唖然と「これは酷いなぁ~」とため息しかでなかった。
ヤシの木がバタバタ倒れている海岸に言葉を失う

ヤシの木がバタバタ倒れている海岸に言葉を失う

遠藤さんに「5年前はこんなに酷くなかった」と話せば「そうなんですよ。このテプカ島はツバルの中でも特に浸食の被害が強い。10年間で海岸線が約10~20メートルは浸食され後退している」と遠藤さん。となると私が前回訪れた時と比較すると場所にもよるのだろうが最大で10メートル前後は海岸線が後退している可能性があるわけだ。5年前に比べバタバタと倒れ、また足元が波に流され傾きながらも必死にこらえ様としているヤシの木が明らかに増えた。
倒れたヤシの木2

倒れたヤシの木2

倒れたヤシの木

最後の抵抗か、倒れまいと必死に抵抗するヤシの木

最後の抵抗か、倒れまいと必死に抵抗するヤシの木


地球温暖化に対処する方法として主に二種類ある。「適応策」と「緩和策」だ。適応策とは被害が起こることを想定した対応だ。例えばヒマラヤの氷河湖が決壊する前に水門などを作って水位を下げ決壊を事前に防ぐことがそうだ。ただし、適応策では温暖化の直接的原因である温室効果ガスの抑制にはつながらない。根本的な問題解決にはならないが、しかし、すべての国々が1つになって地球温暖化対策に乗り出し温暖化を防げる時が来るまで氷河湖は待ってくれないだろう。もうすでにいくつもの氷河湖が決壊しているわけで、このままでは新たな被害が増え続ける。ツバルとて同じ事だ。50年後には水没の危機だと指摘されているのに温暖化が治るまで指を加えて悠長に待っている時間などとてもない。

「緩和策」とは温暖化の根本的な解決に向け大気中の温室効果ガスを抑制しさらなる温暖化を食い止めることだ。例えば昨年、私が関わった第1回アジア・太平洋水サミットやCOPのような気候変動枠組み条約についての国際会議、また次の洞爺湖サミットなどで温室効果ガスの排出抑制を国際的に約束させることが緩和策に繋がる。

遠藤秀一さんのマングローブの植樹は、海面上昇による海岸の浸食を防ごうとする「適応策」だ。この活動にツバル人も参加し、この3月10日の植樹にも子どもを含め5人が参加。以前、フナファラ島には100人以上いた住民も今では20人ほどしか住んでいない。海面上昇によるいわゆる環境難民としてニュージランドに移住した島民も多い。遠藤さんがフナファラ島でマングローブの植樹を始めたのは高波による海岸線の浸食が激しいこと、またまだ美しい自然が残っているとのこと。

天国を感じさせるファラオの海

天国を感じさせるフナファラの海

フナファラの美しい砂浜

フナファラの美しい砂浜

遠藤さんは「昨年からマングローブの植樹を始めたが、植えたはずのマングローブが波に流されてしまう事が多い。ガックリすることも多いが、でもマングローブは砂浜に根を張るため、高波などから砂浜を守る。まだまだ時間はかかるけれどこの美しいフナファラの海岸にマングローブの森が出来るまで活動を続けたい」と話していた。
昨年、植えられたマングローブ

マングローブを植える子供

マングローブを植える子供

昨年10月、コスモ石油の鴇田環境室長も遠藤さんと共にこのフナファラでマングローブの植樹活動を行った。鴇田環境室長は「地元では高潮対策の窮していた。マングローブの権威である沖縄大学の馬場教授に相談したところ、マングローブの植樹が打開策になることがわかった。早速、馬場教授の指導を受け、現地に乗り込んだ。副首相兼環境大臣タバウ・テイイ氏もこの活動に賛同し地元の子供たちに加わって自ら植樹を行った。植えたマングローブが根付き浸食を防ぐことを願い、炎天下、517本ものマングローブの苗木を皆の手で植樹することができた。コスモ石油エコカード基金は地球温暖化被害の最前線地域への支援の1つとしてツバルの活動に協力している。そして今回の植樹は二回目。イエレミア首相も私たちのマングローブの植樹活動が海岸線の浸食を和らげる対策として高く評価し、国内で採用の水平展開を検討している」と話している。
島の子供とマングローブを植える

島の子供とマングローブを植える

マングローブを植える鴇田環境室長

マングローブを植える鴇田環境室長

私も遠藤さんや鴇田さんと一緒に植樹に参加してみたが、灼熱地獄でそれはそれは大変だった。写真だけを見れば美しい海岸にマングローブでは爽やかで楽しそうに映るかもしれないが、現場は過酷極まる。特に暑さに弱い小生は目がグルグルとまわり倒れそうになったほどだ。この厳しい環境の中でもめげずに植樹活動を続けている遠藤さん、そしてその活動を支援しているコスモ石油、また鴇田環境室長までが昨年に引き続き現場まで訪れて一緒に汗を流している姿に頭が下がる思いだった。

2008年3月10日 ツバルにて 野口健

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