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産経新聞連載 直球&曲球 掲載されました

2016/10/20

産経新聞連載 直球&曲球 掲載されました

10月20日 産経新聞の連載「直球&曲球」が掲載されました。

http://www.sankei.com/column/news/161020/clm1610200007-n1.html
エベレストに挑戦するときよく「無理をしないでね」と言われる。しかし、無理しないでエベレストに登れるのならば誰もが登れてしまうだろう。無理をしなければ登れないのがエベレストだ。ただし、エベレストで学んだことは「無理」という言葉の中に「してもいい無理」と「してはいけない無理」があること。何かを成し遂げようとすれば無理をしなければ到達できない。逆に言えば無理をしなくてもできることはそう大したものではない。どこまでが良くてどこから先がいけない無理なのか。天候、体調、精神状態によってそのハードルは微妙に上下するだろう。実に紙一重だ。

1998年のエベレスト挑戦では山頂まで標高差で残り300メートルまで迫っていた。しかし、山頂直下でまさかの天候急変、猛吹雪となる。強風に吹き飛ばされないよう岩陰にしゃがみ「進む」か「退く」かその判断を迫られた。顔面は凍り付き、体温が低下していく中で、登頂しなければならないというプレッシャーもあったが、最後は「死にたくない」だった。

そして撤退を決断。しかし一緒に登っていた相方は「このまま山頂を目指す」と判断が分かれた。下山中「2年連続して失敗してしまった...」と正直、帰国するのが怖かったが、僕はほぼ無傷で帰還。1人山頂を目指した仲間は遭難し翌日、シェルパに救助され、ベースキャンプへ降ろされてきたが手足の指の大半が凍傷により死滅していた。変わり果てた彼の姿を見ながら、僕の「あの時」の判断は間違っていなかった、失敗ではなかったのだと...。

しかし、帰国後は方々で「失敗した」との言葉が向けられた。何をもって「成功」で何をもって「失敗」なのか。登れば成功で登れなければ全て失敗なのか。そんな薄っぺらなものではないだろう。「撤退」なり「退却」という言葉を嫌うがために「転進」という言葉が便利よく使われた時代もあったが、その結果どうなったか。「退く」は必ずしも「負け」ではない。「退く」ことによって次に「つながる」のであればそれは僕にとって前進なのだ。

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