【前編はこちらよりご覧ください】
https://www.noguchi-ken.com/M/2025/09/post-2314.html
そしてこの度の動乱。ネパール政党に対する汚職疑惑、また格差社会に対し一部のネパール人たちが暴徒化し首相や閣僚の自宅を襲撃し閣僚やその家族をリンチしその様子をSNSにアップ。
中にはパンツ一丁姿にされたまま集団暴行を受け川に落とされる様子も...。その余りに野蛮な動画を見ながら思わず天を仰いでしまった。ネパールの国際的なイメージが地に落ちたと。
カトマンズの知人の話しではデウバ元首相夫人で、先日まで外相だったアルズ ラナデウバ氏がデモ隊にボコボコにされ、やはりその映像もSNSで拡散されたそうだ。女性でありながらも群衆に容赦なくメタ撃ちにされる。
そして大統領官邸や現首相や前首相、そして閣僚らの自宅が次々に焼き討ちされたとも。
日本では国会議事堂に当たるのだろうか、その歴史ある建物も全焼。各省庁や裁判所の重要種類が全て燃えてしまい裁判も無期限で停止との報道。
そして全く理解に苦しむのは群衆の一部が複数の刑務所を襲撃し殺人犯などの凶悪犯含む囚人を大量に解放したのだ。そして警察署を襲い銃器を略奪。凶悪犯や多くの銃器が街に出回ってしまったのである。
また、聞くところによると警察の制服も警察署が燃やされた時に一緒に燃えてしまったのだと。故に警察官が任務につけない状況だとも。これは極度の治安悪化に繋がるだけに極めて深刻な問題だ。
さらに群衆は複数の高級ホテルを襲撃し、ショッピングモールも破壊され略奪。日本で起きた日比谷公園焼き討ち事件よりも遥かに規模が大きい。
そして、国会を転覆させたという意味ではあの226事件よりも遥かに破壊力があった。
ネパールも発展途上国とはいえ民主主義国家であり、法治国家である。
確かにデモは国民に与えられた権利であるが、しかし、暴力や略奪放火は明らかに犯罪行為でありその行為の正当性は認められない。デモにも一定のルールが求められる。原理原則を軽視してしまえば何でもありの社会になってしまう。
そもそも選挙の度に共産勢力に投票してきたのは紛れもなくネパールの有権者である。その結果がネパールの腐敗政治を生んだのだとすればその責任はネパールの有権者にも少なからずある。
王政独裁体制から民主化を選んだ国民ではないか。ならば、投票によって国の有り様を決めなければ「そもそも論」が崩れ去ってしまう。
そして観光立国でありながら複数もの高級ホテルを襲撃し放火するのも論外。
ヒルトンホテルは全焼。ヒルトンの経営にネパールの大臣の息子が関わっているとの噂から襲撃に繋がったという話しだが、ヒルトン側は以前からその噂に対し正式に否定していたとのこと。
デマ情報で群衆が放火したとするのならば、その行為はあまりに愚かだ。どうやって彼らはその責任をとるのか。
暴動なり紛争の場合、保険が適用されないケースが一般的だ。そして何よりも外国資本にとって「ネパールは信用できない」と判断されてしまえばネパールにとって大、大、大打撃だ。
その事を熟慮した上での襲撃であったのか彼らに問いたい。
いずれにせよ与党政権のマルクスレーニンの統一共産党や連立を組んでいたルクラネパリコング党、そして政権からは外れたネパール共産党統一毛沢東主義派(マオイスト)といった主要な政党は事実上、吹っ飛んだ状態。
あの動乱で明らかになったのは焼き討ちされたマオ派のプラチャンダ元首相の自宅には室内にスイミングプールがあったこと。つまり大豪邸だったのだ。そういえばリビアのカダフィ大佐の自宅にも室内に豪華なプールがあった。
分かりきっていた事だが最貧国ネパールでは一部の政治指導者達が莫大な富を蓄えていた。恐らく非合法的な富が多分に含まれていたのだろうし脱税もしていたのではないか。
共産一派のマオ派は「弱者を助ける」と訴え農村地帯の支持率が特に高かったとも聞く。しかし、実情はそんな綺麗なものではなかった。「さもありなん」というのが私の率直な感想だ。
皮肉なことに暴力によって奪った権力を今度は暴徒の暴力によって滅ぼされていく。やはり、さもありなん。
動乱後、水面下ではギリギリまで軍政が敷かれる状況にあったようだ。
ただ、結果的に軍政が敷かれる事はなくネパール大統領によってスシラ・カルキ元最高裁判所長官がネパール大統領は暫定総理に任命された。
ネパール初の女性首相の誕生である。現役時代、政治家の汚職に厳しく切り込んだ事でその職を追われたとも言われている。また「王政独裁体制の時に夫婦揃って投獄された経験のあるフリーダムファイターです」とカトマンズ在住のジャーナリストからの情報。
ネパール国民からしたら今度こそ綺麗な政治をしてくれるだろうと期待は膨らむはずだ。
しかし、国会議員でもない彼女を大統領の権限により暫定とはいえいきなり総理に任命した事への反発は後々、噴出する可能性がある。新たな権力闘争は必ず起きるだろうし、また彼女が法に対し厳密でなければならない最高裁判所長官であっただけに総理誕生の手続きについて突っ込まれやすい。
そして下院は解散し多くの政治家は失職中。主要な政治指導者たちは国軍の保護を受けながら身を潜めているとのこと。おそらく彼らが表舞台に立つ事はもうないだろう。それどころか、被告人になる可能性が大きいのではないか。違法行為が確認されれば裁かれるべきである。
次の国政選挙は何と来年の3月との報道も(ネパールでは雨季と冬季は選挙はできないとのこと)。
下院議員はゼロの状態でどうやって来年の総選挙まで議会運営を行なっていくのか。どうやって法案を通すのか日本人の常識からしたら全く分からない。
政治経験のない彼女がどこまでこのカオス状態をまとめ上げていくのか。
単身、泥ついた政治の中に乗り込んでいくのだ。様々な妨害を受けるのは安易に想像ができる。身を削る覚悟だろう。いや、その命を国に捧げたのだろう。
来年3月の選挙を待たずにもう一波乱、ニ波乱あるのではないか。そんな気がしてならない。その時、軍はどうでるのか。ひょっとしたらマオイストの残党が何かを企んでいるのかもしれない。なんせ、彼らはゲリラ上がりである。再び山に籠り何かを始める可能性も否定できないだろう。
これからのネパールは誰しもが予測不可能だ。あの内戦の如く大混乱に陥る事も考えられる。
未知数な部分があまりに多いが、ただ、外国人観光客はそれほど心配しなくてもいいのではないかと思いたい。
1996年から2006年まで続いたマオイストによる内戦では死者数は13000人。避難民は数十万人と言われているが外国人を殺害又は誘拐というのは私が知る限りゼロだ。
ある時、ヒマラヤに向かっていたロシア隊のジープに外国人が乗っているとは知らずマオが手榴弾を投げ込みロシア人の足の一部が吹っ飛んだ事件が起きた。
マオイストの代表はその直後、ロシア大使館に謝罪の連絡を入れたそうだ。
ネパールはテロリストでさえ外国人には直接的には手を出さなかった。高々、数百ドルを要求してくるような可愛いものだ。どこぞの国々とは雲泥の差である。
基本的にはネパール人は極めて温厚。そして何より治安がいい。カトマンズの夜道を一人で歩いても身の危険を感じたことがない。どんな薄暗い裏道でも。ナイロビなら私の滞在経験からも有り得ない。
また、約60回ネパールに訪れているが物を盗まれたのはほぼゼロ。最貧国でありながらも極めて治安がいい稀な国なのだ。
私にとってネパールは第二の祖国。これからの新しいネパールに期待をしたい。
先行きは極めて、極めて厳しい道のりになるのだろうが、ひょっとすれば奇跡は起きる。そう願ってやまない...。
2025年9月14日 ディンボチェ村にて